《旅に出る前は、旅に出たくない気持ちが盛り上がる。それが本当の旅人》

ロサンジェルスで、またいろいろな人と出会い、世界旅行者でなければ得られない、様々な貴重な情報を入手して、僕は東京へと戻ってきた。
東京へ戻ってすぐにベトナム大使館へ行ったら、たった15分でベトナムの一ヶ月有効マルチエントリービザが取れてしまう(料金6000円)。
ちなみに、この時期、シングルエントリービザなら5000円でした。
中国のビザ、ベトナムのビザを取ってしまったのだから、次は上海へ旅に出る持ち物を揃える。
海外旅行用のジーンズとしては、僕の本「大人の海外個人旅行」を読む。
その「海外旅行の持ち物リスト」には、「ゆったりした細すぎないもの。長期のときは、2本あるといい」と書いてある。
自分では考えずに、本に書いてあるとおりに用意すればいい。
僕はこの本で、読者のためではなくて自分が旅に出るために便利なように持ち物リストをまとめたからだ(もちろん、読者にもとても参考になると思いますよ。建前ではなくて、本当のリストなんだからね)。
LAのベバリーセンターにあるTimberlandで、Loose-fitという腰から下がかなりゆったりとした形のジーンズ、ウエストが30インチのものを購入した。
これを今度の海外旅行用に使うことにした。
ジーンズの長さは34インチあるが、これではもちろん中年日本人体型の僕には長すぎる。
そこで、裾を何重にも折り返して短くする。
こうすると、折り返しの部分になにかを隠せる場所ができるわけだ。
アジアを横断したときは、この折り返しの部分に、いざというときのために、円やドルの現金を隠しておいた。
僕の本「間違いだらけの海外個人旅行」には、「靴に金を隠してはいけない」と書いてあるの。
書いた本人としては靴に金を隠すわけにはいかず、その代わり折り返したジーンズの裾に金を隠したわけだね。
女の子の場合は、海外で襲われてジーンズを脱がされるときのために、このジーンズの折り返しの部分にコンドームを隠しておいてもいいだろう。
強姦されたことも旅の出来事ならいい想い出に変わるかもしれない。
強姦犯と結婚するのもよくある話だが、性病にかかったことなんか絶対に思い出したくないんだからさ。
覚悟して、「やらせてあげるから、コンドームを使って…(うるうる)」と頼めば、強姦犯もやさしくしてくれるかもしれないよ。
長期の旅行のときはジーンズ2本必要と自分で書いている。
今回は夏の暑い時期なので、GAPで見つけたショートパンツを一つ入れて、ジーンズは着たきり雀の1本だけにした。
海外旅行では、とにかく歩き回るのが基本なので、靴が一番大切だ。
「大人の海外個人旅行」の付録「旅の持ち物リスト」でも、僕自身「スニーカー1足 履きなれたもの」と書いているが、いつも旅へ出る直前になって靴のことを考える。
僕は幅広甲高の日本人足なので、LAではなかなかピタッとした靴が入手できない。
しかも、旅に出る直前になって靴を買っても、履き慣れる時間がないので、旅にもって出るには靴を買うのが遅すぎるのだ。
旅好きの人なら、旅行用に適当に履き慣らしたスニーカーを、常に用意しておいた方がいいだろう。
僕は旅先で靴を履き潰したことが何回もあるが、靴がダメになって焦ってて買いに行くと、必ず変な靴を入手してしまう。
ヨルダンで靴底が剥がれてしまった時は、あわててナイキエアを買った。
これはどうやら贋物だったらしく、100mも歩くとすぐに靴紐がすぐにゆるんでしまう、非常に扱いにくいものだった。
ギリシアで靴底が割れてエアークッションがむき出しになったこともある。
この時は、イタリアに着いてすぐに靴を買いに行ったら、まるっきりサイズの合わない靴を、イタリア女店員の口車に見事に乗せられて買わされてしまった。
バンコクで靴がダメになったときは、サンダルを購入した。
が、これも、踵のクッションが自分の足に合わず、捨てることになった…。
結局、今回の旅行では、東京の日常生活でいつも履いている、かなりくたびれた靴を使うことになった。
ひょっとしたら旅の途中で壊れるかもしれない。
と、まあ、旅の服や靴について、書いてきたが、正直こんなものはどうでもいいわけだ。
中国や東南アジアに行けば、ジーンズや靴は、いくらでも安く売っているさ。
実際に旅に出てしまえば、服装なんか、そんなに気をつかうものではないんだ。
旅行者がこういう風に、旅行に出る前に、ああでもないこうでもない、これを用意しないといけない、あれも持っていったほうがいい、と考えて時間つぶしをしているのは、実は「本当は、旅に出たくないから」なんだよ。
旅に出るのを引き伸ばしているんだ。
ざっくばらんな話、旅なんて、たいして面白くもおかしくもない。
つらいこと、苦しいことばっかりだよ。
しかも、本当に危険だらけだ。
旅慣れてない人は、頭で旅を考えるので、楽しいことうれしいことをたくさん期待する。
また旅に出ても、本当は苦しいことつらいことなのに、それを無理矢理きれいな想い出に作り上げてしまう。
昔読んだガイドブックの中に、今でも覚えている旅行体験話に感動的な話があった。
「パリで知り合った男性に、薬を飲まされて、車で人気のないところに連れて行かれて、いたずらされてしまいました。でも、いま考えてみると、いい想い出です」とあったんだ。
旅がわかってくると、旅に出る前に、旅先でのいろんな問題、障害、困難を予想してしまう。
そして、そのいくつかは見事に実現してしまって(全部起きたら大変だけどさ)、「あーあ、こうなると思ってたんだよなぁ…」と後悔する。
またそれをうまく切り抜けたところで、よくある話で別にたいして面白い話でもない。
その苦しさの中に飛び込むのは、その苦しさを、自分の運命として、使命として受け入れて初めてできることだ。
旅のことばかり話すと、旅行経験の少ない人には何を言っているのかわからないかもしれないね。
もっとわかりやすく書いてみよう。
例えば、男性が、女の子と会うときだ。
女の子と会うときは、男性なら誰でもセックスのことを考えるよね。
ああしよう、こうしよう、こういう変態的なこともしたい、本で読んだあんな変わったこともしたい、と思う。
けれど、実際に会うと、セックスできない場合も多い(頭の中がものすごくエッチな想像で一杯で、口をきけない人もいるよね)。
また、たとえ実際にセックスしたとしても、その行為自体はたいして変わったことでもない。
セックスをすると、やはりお金もかかるし、時間も使うし、いろいろ精神的にも疲れてしまう。
はっきり言うと、中途半端な不完全燃焼のセックスなんかするのはキモチよくない。
それよりも、エロ本を読んで、エロビデオ、エロDVDを見て、マスターベーションをしていた方が、ずっとキモチよく気楽なものだ。
これを海外旅行で言えば、実際に旅に出たりせずに、エアコンの効いた自宅の居間で、海外のきれいな写真満載の雑誌を見たり、海外旅行の冒険談を読んだり、海外旅行のビデオやDVDを大画面テレビで見たりしていたほういい。
実際にトラブルだらけの海外旅行に出るよりもずっとキモチイイようなものだね。
海外旅行がセックスと違うところは、その後で、「責任を取ってよ」とか「何で会ってくれないの」とか連絡がないところかな。
一度利用した旅行会社からパンフレットがしつこく送られて来たりはするけれども、旅行会社は無言電話を入れたりしないものね。
旅行代理店は、「私のどこが悪かったの?」なとど問い詰めたりはしない(まあ、そういう旅行代理店はなかなか優秀だ、といえるかもしれないけどさ)。
海外旅行は、楽しいことも多いけれど、苦しいことも多い。
それがよくわかっていると、身体症状に表れてくる。
つまり、本当に旅慣れた人は、旅に出る前に必ず体調が悪くなるものだ。
昔、1994年に、僕が若いピチピチヤングギャルといっしょにタイへ旅に出たことがある。
このときは、なにしろ、海外旅行の困難も、女の子との困難も、二つ一度に考えた。
その精神的な不安定さが見事に身体に現れた。
昔手術した肩の骨が痛くなった上に、出発直前には熱まで出て、ほとんど旅に出れる状態ではなくなってしまった。
しかし、旅に出てしまうと、まあ元気になるんだけどね。
というわけで、今回の旅の前は、急に歯が痛くなった。
しかし、この歯が痛いのが精神的なことだとわかっているので、放っておくと、もちろん歯の痛みは「ちぇっ、バレたか…」と引っ込む。
上海への新鑑真号の予約を入れる前に、船の混雑状況を聞くと、「7月一杯なら席はあります」との答え。
日本から中国へのフェリーは、どれも夏休みのど真ん中でも運賃が上がったりしないので、とても使いやすい。
学生さんや、長期旅行を考えるリストラサラリーマンなどは、絶対に中国への船を勧めておきます。
船のいいところは、船の中でたっぷりと時間があるので、事前に何も考えていなくても、そこでゆっくりと旅行計画を立てられるところだ。
そこで、とにかく新鑑真号の予約を入れる。
体調が悪くても、船に乗りさえすれば、もう旅に出ているのだから大丈夫、体調は回復するだろう。
ところが、船の出発直前に大変なことが起こってしまった。
台風が日本に接近してきたんだよ。
体調が悪いうえに、気候まで悪い。
これは、やはり、旅なんかに出ない方がいいのかもしれないよね。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20090304
(「世界旅行者・海外説教旅」009)