チュニスの天才旅行者4 《いつかは必ずお返しが来るのが世の中》
さて、前回はビッグバンによって「三流旅行世界」が出現したところまで述べた。

三流大学生は日本のマスコミに特有の「何も知らなくてもパンフレットさえ集めれば、何とか本一冊はでっち上げられる」という、金儲けしか頭にない、特になんの能力もない「編集者」と呼ばれる種族によって、もっともらしく作られた旅行ガイドブックで、「クリスマスイブには好きでもない女に金を使ってベイエリアのホテルで一発やらなければならない」と思いこまされたのと同じように、なぜか海外旅行に出なければいけないと思いこんでしまったのだ。

それに隣にはジョーンズさんもいた。(They had to keep up with the Joneses.)

そこで、旅に出る理由もなしに旅に出る三流旅行者が世界中にあふれた。
イギリスやアメリカで語学留学でもしていると大変だ。
次から次へとほとんど付き合いのなかった友達が訪ねてきては「僕はどこへ行ったらいいの?」と質問を浴びせるからだ。
これも迷惑なことだが、これらの三流旅行者が集まると、もっととんでもない状況が出現する。

それが、「三流旅行者による旅行自慢合戦」だ。
ただ三流旅行者はまともな旅行をしたことがないのが特徴だ。
すると旅行自慢はできないはずじゃないか(??)。
しかし良く考えてみると、誰も旅行をしたことがないのだから、どんなことを言っても嘘がばれないのだ。

ここに気付いたのは、なかなか賢い旅行者だが、なあに、ただ日本では見え見えの嘘が海外では誰も「おまえは嘘つきだ!」と言う度胸がないために、堂々とまかり通っただけなのだ。

こうして、旅行する気のない三流旅行者は、世界中の「日本人宿」に巣くって、嘘だらけの自慢話やうわさ話を作り上げては、互いに誉めあって、無意味に盛り上がった。
中にはその話を信じる人まで出てきた。
さらには、こういういいかげんな話を記録して金儲けを考える人も出てきた。
このタイプの世渡りのうまい人を、日本では「旅行作家」と呼ぶ。
海外にも「旅行作家」は存在するが、日本の「旅行作家」の場合は「本人がまともな旅行したことがない」のが特徴で、常識を働かせれば簡単に区別がつくという話だ。

この結果、三流旅行者は、旅行をしたいから旅行するのではなくて、旅行の自慢をしたいために旅行するようになった。
でももちろん、旅行をしなくても旅行の自慢ができればそれに越したことはない。
そこで、もっと簡単な方法をとることにした種族も出現した。
それが旅行ガイドブックや旅行記を読んで旅行の自慢をする連中だ。
これは三流旅行者とも呼べない。
まあ、しいて名付ければ「三流人間」だろうか。
だって、旅行をしたことがないのだから旅行者とは呼べないし、まあ一応人間には違いないのだから。
この三流人間タイプを見分けるのは簡単だ。
そういう連中のいそうなところで、「『地球の歩き方』は嘘だらけだぞー!」と大声で叫べばいい。
自分の存在の根源を否定されたと言うので大慌ての三流人間が、訳の分からない理屈をつけて、本物の旅行者の間では常識となっている、みえみえの旅行の嘘を必死で弁護し始めるからだ。
最終的には常識的で正直な旅行者を集団でリンチにかけて、口を封じようとする(例えば、ニフティのフォーラムで言うと「会員削除」したりするようなものだね)。
ただ、この集団リンチに参加したことによって、これから一生その烙印を消すことが出来ず、世間知らずのオタクの集まっているだけのパソコン通信以外の、一般社会のごく普通のまともな旅行者からはちっとも相手にされないうえに、いつかは本物の世界旅行者先生様からの「本格的な、徹底的な、最終的な」お返しが来るのが恐ろしいが(笑) 。
まともなセックスもしたことのない世間知らずのくせに、雰囲気に流されて、中途半端に調子に乗って、「本当の本物」に下手に手を出すと、一生を使って償わされるかもしれないが、それもわからないレベルなのだから、かわいそうなことだ。
かわいそうでも、自己責任の時代では、逃げるわけにはいかない。
ま、自分のやったことは自分で責任を取るのがこの世の常なので、それも仕方がない。

おやおや、何か訳の分からない文章になってしまった。
注意しておくが、これはごくどこにでもある一般的な話だ。
パソコン通信で良く似た話があったとしても、そのことを皮肉ったり、当てこすったりしているのではないので誤解がないようにしてもらいたい。
パソコン通信には、なんでもかんでもすぐに自分のことを言われていると思いこむ、社会性のない、自意識過剰な人(つまり、オタク)がたくさんいるようだから注意しておく。

僕は三流の人間は相手にしないから、安心していい。
僕は『世界旅行者』なので、ものすごい体験をしているし、ありふれた三流人間にはうんざりするほど出会っているので、わざわざ最近の例を取り上げる必要もないのだ。 

さて、僕はアフリカへ行く理由を作るために、色っぽい人妻と恋をして別れた。
旅に出る理由は恋に破れた結果、というのが一番いい。

なぜなら恋も旅も、ただ気まぐれな心の動きにすぎないからだ。

その思いが浮かぶと、心はもうアフリカへと飛んでいた。
わずかな荷物をまとめて、鉄道に飛び乗った。

アンダルシアの都市を全部制覇した後で、南スペインの港町アルヘシラスへとたどり着き、北アフリカ、モロッコのタンジェへと、ジブラルタル海峡をフェリーで越えた。

モロッコのマラケシュから雪を抱く大アトラス山脈をおんぼろバスで越えて、果てしなく続く砂漠を見た。

その時に、アルジェリアへ行く気持ちは固まっていた。