「日本が世界に冠たるセックス国家である自覚をもつことから始まるものがあるかもしれない」
(in east village, NY, 2000/01/10)

 

少し長く海外を旅行して、久しぶりに日本に帰ってきて、成田空港から山手線日暮里駅に向かう成田エキスプレスの窓に頬を寄せて、通り過ぎる日本の風景を眺める時、誰でもすぐに、絶望的に、家の小ささと、都市計画の無さ、さらに、それを生み出した日本人の、自らの生活環境に対する本質的な無関心、というふうな欧米諸国との相違に気が付くだろう。

普通はそれだけで終わるのだが、そのあと、久しぶりに、家の近くのコンビニや、レンタルビデオ店に寄ったり、駅で夕刊紙を買ったり、あれこれ雑誌を読んでみたりすると、もっと大きな違いに気が付く。

それは、日本には、セックスがあふれているということだね。

日本では普通の週刊誌や夕刊紙にもありとあらゆる風俗情報があり、体験談がある。
もちろんそれ専門の風俗情報誌や雑誌も売れ行き好調らしく、各種出版されていて、その中では、かわいい純情そうな女の子が裸でにっこりと笑って、読者を誘っている。

レンタルビデオ店は、エッチビデオだらけで、女の子が街を歩いていると、ビデオの中での本番セックスに誘われる。
そのこと自体、海外ではありえないことだが、それを日常の風景として、誰も不思議だと思わないだろう社会も、世界には日本以外に存在しない。

援助交際もごく当たり前のことになっているので、今では、「援助交際」という言葉自体が時代遅れになってしまった。

海外経験が多ければ、こんな国は外国に存在しないと、つまり、日本は世界でも珍しいセックス国家なのだと、すぐにわかる。
もちろん、国家のありようは、さまざまあるのだろうから、セックス国家であろうと、軍事国家であろうと、それはそれでいい。

問題なのは、それを日本という国が、つまり、そこに暮らす日本人が、自覚していないって事なんだよね。

これは危険だ。

だって、軍事国家が軍事国家だと意識せずに、軍隊を動かせば、世界の危機となるのだから。

とすると、セックス国家が自らをセックス国家だと意識せずに、セックス大好きな日本人をかってにセックスさせておくと、やはり、世界の危機となるだろう。

事実、世界各地で、日本のセックス攻勢にかき回されている所は多いし、しかも、日本人セックス軍団はさらなる発展を目指して、世界進出、世界制覇を企てているのだから。

 

僕がパリからKLMでLAへ向かった時、隣に座っていた黒人が俳優をしていて、共通の話題をあれこれ探していくうちに、たまたま、日本のアニメーションについて、話をすることになった経験がある。

彼は「日本のアニメは、ストーリー性があって、絵がきれいで、大人の評価にも耐えられる」と、儀礼的な、ありふれた誉め言葉を述べる。

僕は、それもあるが、と続けて、「日本のアニメはすべてエロチックだ。日本のアニメには、セックスが背後にある」とコメントした。

すると、彼は、ちょっと驚いた様子で、「日本のアニメは非常にエロチックだが、意味なくセックスが放り込まれている」と感想を付け加えた。

「そう、日本人は、すべてにセックスを付け加える、それも無意識のうちにだ。それが日本人なんだ」と、僕は答えた。

 

日本人のすべての行為の裏には、無意識のセックスが存在する。
なぜ無意識というか、それは、欧米ではセックスが宗教的、社会的に、規定され、意識されているからなんだね。

日本人のセックスは、無意識、無自覚のものだ。

だから、一旦流れ出したセックスの潮流は、とどまるところを知らず、日本中にあふれ、世界中に浸透していくだろう。

 

1999年からのLA滞在で、非常にナイーブな若い女の子と、話をした。
彼女は20歳を越えたばかりで、自分の友達の中で、彼女一人だけがセックスを未経験、というコンプレックスを持ってる。

話を聞いていくと、彼女の住む地方都市では、高校卒業までにはほとんどの女性が性体験を済ませ、中学校で半分、小学校で初体験をする女の子も珍しくないという。

これが現実なのだが、みんながセックスを経験している割に、セックスを意識することはない。

セックスを意識せずに、セックスをすること、これが日本のあり方の一つだね。

つまり、すべての行為は、厳密に、規定されたり、評価されたり、分析されたりすることがなく、ただずるずると流れ、変化していくだけなのだ。

 

セックスを意識することが必要だろうか?

僕は必要だと思う。

それは、セックスの中でさえ、自分の主体性を持てないならば、政治的、社会的にも、ただ、だらだらと流されていく存在に成り下がってしまうだろうから。

 

日本が世界でも珍しいセックス国家であることを、明確に認識することから、まず始めなければならない。

それがどこへ通じるか、それは、まだわからないが。

a recognition that japan is a sex-oriented nation and
that japanese are sex crazed people
may lead us to another horizen

 

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