《世の中のわかってる人》中国、北京の人民解放軍模範兵士

中国も徐々に自由化されてきたが、人民解放軍は規律が厳しく、その行動は中国人民の模範となっている。
僕が北京で、人民解放軍の、模範的行動で表彰されたこともある兵士と知り合って、家に行った時の、これは本当の話だ。
なお、このお話の「元」ですが、1999夏で「一元=約14円」です。

 

ある日、模範的兵士の息子が学校から帰ってきて言った。

「おとうさん、僕、道で一元拾っちゃった。学校の先生が拾ったものは交番に届けなさいって言ってたからこれから届けに行くね」

この兵士は、子供にも、自分のような模範的人間になって欲しい、そろそろ世の中の本当のことを教える時期が来たと思って、こう答えた。

「いいかい。それは、世間知らずというものなんだ。学校の先生は一応建て前でそういっているだけなんだ。一元を届けられても警察のおじさんも困るんだよ。それは共産党がおまえにくれたと考えて、もらっておきなさい」
「うん、分かったー」

その次の日、息子が帰ってきて言った。

「おとうさん、今日は百元拾っちゃった。これも僕がもらっておいていいんでしょ?」

「それはいけないよ。いいかい、百元になるとこれは違う。百元は大金だ。これを交番に届ければおまえが正直だという評判が立つんだ。人間にとってはいい評判がお金よりずっと大切なんだよ。おとうさんも、そうやって正直に行動したから、模範的兵士になれたんだよ」

「おとうさん、よく分かりました」と、素直な息子は交番へ百元を届けた。

 

そのまた次の日、息子が帰ってきて言った。

「おとうさんの言う通りだったよ。校長先生がみんなの前で僕のことを正直だとほめてくれたんだ」

「そうだろう?お金なんかよりもいい評判の方がずっといいんだ」

「それでおとうさん、今日は千元拾っちゃったんだ。これも交番に届けに行くね」

解放軍兵士のおとうさんは息子の両肩をつかみ、引き寄せて、じっと目を見つめて言った。

「お前はまだ分かってないようだね。千元は届けなくてもいいんだ」

「なーぜ、おとうさん?」

「たてまえを除いて、よ〜く考えてごらん。いい評判と千元と、どっちが実際に本当に大切なのかをね?」

(いい評判も金には負ける)

 

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