《連想》フランスの紳士

 

僕がフランスの、カルカソンヌからボルドーへの列車に乗っていた時のことだ。

同じ一等のコンパートメントに身なりのいい紳士が乗っていた。
窓の外はボルドー平野が広がっている。

「素晴らしい景色ですね」と僕。
「あの夕焼け雲は山かと思いましたが、雲でした」

「ここは大平原ですから山は見えませんね」と紳士が答えた。

「あの雲はうさぎに似てますね。あれは牛」と僕ははしゃいだ。

「私にはあれはうさぎには見えませんね」と紳士。

「何に見えますか」と僕。
紳士は低い声で答えた。

「SEXです」

しばらくすると平原に林が見えてきた。

「素晴らしい景色ですね」と僕。
「あの林はまるで海岸にうち寄せる波のようですね」

「まあ、あれは波には見えませんね」と紳士。

「何に見えますか」と僕。

「SEXです」

僕は、失礼だと思ったが、聞いてみた。

「どうしてあれがSEXに見えるんですか?」

紳士は平然と答えた。

「だって、私はSEXのことしか考えていませんから」

(紳士も、君も、僕も、みんな考えることは一つ)

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