《世界旅行者、雲南省・昆明を歩く》
海外個人旅行のポイントは、ある町へ着いたら、町を見て歩く前に、その町からの脱出手段を確認し、手配しておくことだ。
だから、僕はまずなによりも次の目的地、大理(Dali)への交通を調べに出たんだよ。
列車の中などで「Lonely Planet」を読んでいたが、昆明から大理まではバスがあって、そのバスの乗車時間は11時間とある。
11時間もバスに乗るのでは、これは大変だ。
昼間移動しても、到着が夜になる。
到着が夜になって、それから宿を捜すというのは、海外個人旅行ではなるべく避けなければならない。
だからこのガイドブックには、「普通の旅行者は夜行寝台バスを利用する」と書いてある。
もちろん、そういう説明は参考にするだけでいい。
というのは、僕の持っている「Lonely Planet」の中国編は、版が古くて、情報それ自体としては、あまりあてにならないものだからね。
それにガイドブックの情報なんて古くてもいいんだ。
だいたいのルートさえわかれば、あとはそれを自分で調べればいいんだから。
だって、「実際の情報は現場にある」んだからね。
自分で行ってみれば、そこに本物の情報があるんだから。
駅のそばにある近代的なバスターミナル「昆明汽車站」に行くと、ボディに大きく「YUNNAN EXPRESS」とペイントされたVOLVOのバスがターミナルビルの前に何台も停車していて、それぞれ行き先の標識まで出ている。
しかも、一番手前の大型バスの前の標識は「大理」となってるじゃないか。
これはいいねー!
ターミナルビルに入ると、ビルの裏側には、なにやら薄汚れた怪しげなバスが並んでいて、そちらからもバスが出ているようだ。
ホールの切符売り場窓口の上には、細かい文字で書かれた大きな時刻表がある。
どうやら、普通バスと豪華バスの二つのタイプがあって、窓口も違っているようだ。
僕はもちろん豪華バスで楽をしていきたいので、豪華バスの窓口に行くと、豪華バスは一時間おきくらいにある。
しかも、昆明から大理への乗車時間は、古いガイドブックにあった11時間とは大きく違い、なんとたったの5時間だという!
これは楽だよねー!
バスはたくさんあるのだから、予約する必要はまったくない。
しかし、目の前でコンピューターから乗車券をプリントアウトしているのを見たら、すぐに欲しくなって、明日の切符を買ってしまった。
というのは、ある場所からの脱出手段を見つけたら、とにかくそれを確保することが、海外個人旅行の基本だからなんだ。
昆明を出る日時を決定してしまえば、その間の時間を有効に使いきれる、と考えるわけね。
というわけで僕は、翌日、つまり7月29日朝8時発の大理行き切符を入手した。
その切符はコンピューター印字されていて、座号は2番、料金は103.50元(約1500円)となっている。
たった5時間のバスなのに1500円なんて、中国の物価を考えると、結構な値段だよね。
でも、乗客も金持ちばかりだったのは、このあとバスに乗ったときにわかることになっているので、続きを読んでね。
ところで僕は、座号2という番号を見て、「せっかくだから景色がよく見える窓側の席がよかったな…」と思ったが、この座号2という場所が窓側かどうか確認するのは、英語が通じないので諦めた。
ちなみにこの切符を買うときは、ノートに文字を書いて筆談で考えを伝えたので、最初から「窓側」とでも指定すればよかったと思うけどね。
明日の大理行き切符を入手したので、もう気持ちはぐぐーっと楽になったよ。
だって、ベトナムへ下るとしても、また昆明へは戻ってくるのだから、ほかのことはまた来たときにやってもいいんだからね。
それをもっと深く考えるなら、朝、鉄道で昆明へ到着した時に、ホテルなんかを捜さず、そのまま駅の近くのこのバスターミナルへ来て、その場でバスの切符を買って、大理へ行ってしまってもよかったわけだよ。
だから大理へ行くのが目的の旅行者には、それを勧めておきます。
もちろんもっと安いバスもたくさんあるようなので、それはまあ、自分の力で捜してください。
次に、昆明駅へ戻って、いろいろ調べてみた。
すると、大理への列車もあるが、それが夜行列車だけで、夜の10時11分に出て朝の6時45分に大理へ到着する。
でもこれでは、走るのが真夜中となるので途中の景色が見れないばかりか、夜の10時まで昆明で時間を潰さなければならない。
また、逆方向の大理から昆明もやはり、夜行で21時26分に大理を出て翌朝6時39分に昆明到着で、同じような感じだ。
ここは、どう考えても、普通の観光客ならば、昼間に豪華バスで行った方が有利だよね。
また昆明近くには、英語で「Stone Forest」、中国語で石林(shilin)というかなり有名な観光名所があるらしい。
昆明駅からはその石林へ特別列車が出ていて、切符を販売する専用の窓口も別に設置されていたので、その時刻も調べた。
あと、ベトナムとの国境の町、河口(Hekou)への交通手段を調べるために、バスターミナルのホールに机を置いて案内しているおばさんに聞いてみた。
といっても、ノートに「昆明→河口」と書いて、ニコニコしながら見せただけだけどね。
すると、そのノートに「19:00、19:30、 20:00、 越南」とサラサラっと書いて、ニコッと笑い返してくれた。
この意味は、多分、「夕方に3本夜行寝台バスがあって、河口からベトナムに入れるよ」って意味だよね。
了解、了解、でもどうせなら昼間のバスの方が、途中の景色が見れていいと思うんだ。
また「Lonely Planet」を読むと、鉄道が昆明北駅というところから河口へ走っているようだ。
上海駅で買った最新版の鉄道時刻表にも、昆明北を午後4時に出て河口へ翌朝8時15分到着の列車が書いてある。
僕の記憶によると、この鉄道は、フランスがフランス領インドシナから中国進出を考えて昆明まで延ばしたもので、雲南省の山々を縫って走るので建設も大変で、線路の幅が非常に狭かったはずだ。
しかし、観光という面から考えると、この雲南省からベトナムへの風景を見ないで、夜行列車でただ通過してしまうのでは、ちっとも面白くない。
ただ、こういうところの列車に乗ったというのは話のネタになるものだから、それはそれでちょっといいんだけどね。
でもまあ、それはまた昆明へ戻ったときにでも考えようっと。
まあ、あんまり先のことをいろいろ考えても仕方がないんだよ。
人は、その日のことだけを考えていればいいんだ。
明日になれば、また明日の風が吹くだろうさ(Tomorrow is another day)。
それに、大理に行けば日本人旅行者もいるだろうから、そこでもなにか情報が入るだろうしね。
というわけで、僕は次に、昆明駅前から2番の市バスに乗り、昆明の中心部へと出かけた。
バスの窓から見ても、昆明はかなり大きな都会で、しかもありふれた退屈な町並みがずーっと続いている。
特に中国風でもなく、雲南省の特徴があるわけでもない、日本の地方都市と考えてもたいして変わったところのない、つまらない町だ。
その中心部らしきところをうろついていると、新華書店という本屋を見つけ、大理の地図(3元)を買って戻ってきた。
昆湖飯店の横の通りは、夕方になると屋台が出て、おいしそうな店がずらりと並んで、中国人民の皆様で一杯になる。
ただ、僕はなにしろ言葉が通じない上に、ぼったくられそうな気がして、屋台で食べる気がしない。
こういうところが、一人旅の悪いところなんだよね。
でも、昆明はもちろん近代的な都市なので、北京路沿いにファーストフードレストランも、フライドチキンの店もあり、ミネラルウォーターやビール、ワインを売る店もあり、すべて値札つきの定価販売。
というわけで、僕が海外旅行をするときの定番で、フライドチキンとワインを買って、部屋で夕食にしましたとさ。
翌朝は、午前8時のバスで大理へ。
さて、大理とは、どういう町なのでしょう?
それは、次の回のお楽しみ。
(「世界旅行者・海外説教旅」037)





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