《世界旅行者は人生に悩み悩み、神の声を聞く。 「上海へ行け!」と》

【吉田照美さん、小俣雅子さんにインタビューされる世界旅行者@文化放送スタジオ】
2002年の夏前、世界旅行者は、トレーニングをして身体を鍛え、お酒を控え、早起きになり、鏡に向かって百面相をして、いろんな表情を試していた。
また、会う友達からみんな、「なんか急に、話がつまんなくなったよー、どうしたの?」と言われていた。
それもそのはず、世界旅行者は、実は、テレビのワイドショーのコメンテーターになるつもりで、その準備をしていたのだ。
2002年の春、世界旅行者は、彼の第三作「大人の海外個人旅行」を出版した。
この本は、「これからは中高年海外旅行の時代が来る!」というタイムリーな、時代の潮流にぴったり合ったテーマで、ついでに若者の海外個人旅行をぼろくそにけなして、めった切りにした、若者以外の誰が読んでもスカッとする本だった。
おまけに世界中の情報もテンコ盛り。
海外旅行の荷物リストもコンドームからバイアグラ、エロ本までリストアップした詳細なもの。
さらには、世界旅行者の2001年春の西アフリカ旅行記まである。
まさしく、信じられないほど中身ぎっしりで、たった720円の、「持ってけドロボー!」というすごい本だった。
当然、ベストセラーになるはずだった。
また、例えベストセラーにならなくても、いままでの「間違いだらけの海外個人旅行」「これが正しい海外個人旅行」と併せて、三冊も旅行本を立て続けに出版しているわけだから、絶対にテレビ局からの出演依頼が来るはずだ(と、誰でも思うよねー)。
さて、はっきり言って、本を少々書いたところで金にはならない。
金にするためには、大ベストセラーを書くか、本をネタにしたテレビのコメンテーターになって名前を売って、地方の講演で稼ぐしかないわけだ。
大ベストセラーとしては、もちろん「間違いだらけの海外個人旅行」が予定されていた。
僕はこれまでの人生経験、恋愛経験、旅行経験のすべてをこの「間違いだらけの海外個人旅行」につぎ込んでいた。
これ一冊の一発屋で終わるつもりだったのだ。
もちろん、最低100万部売って、現金を手に入れて、それでロスへ行って、のんびりと老後を過ごすつもりだった。
ロサンジェルスのホテル加宝を買い取ることも、計画に入っていた。
ところが「間違いだらけの海外個人旅行」が100万部行かなかった。
これが大きな見込み違いだったんだ(涙)。
ただ、いろんな人からの意見を聞いてみた。
どうやら、「間違いだらけの海外個人旅行」は旅行本としてはあまりにレベルが高すぎた、というのが最近は定説になっている。
「間違いだらけの海外個人旅行」は、最初から知的なユーモアがドカンとある。
途中では人生経験にあふれたペーソスたっぷりの話、痛烈な皮肉もあり、ブラックユーモアもあり、最後はシモネタでオチをつけてある。
笑いのすべてのパターンをぶち込んである。
海外旅行本としても読めるし、人生論としても読めるのはもちろんだ。
笑いの教科書としても十分に成立しているという、とんでもない本なのだ。
ただ、あまりにすごすぎて、まあ、よほど頭がよくないと、「間違いだらけの海外個人旅行」の本当の意味は理解できないらしい。
そう指摘されて、次の「これが正しい海外個人旅行」は、一般向きにした。
なかなか深いが、誰にも理解できるまじめな旅行本を書いた。
ビザの取り方や、旅行情報の集め方などの、旅行のすべての基本的な問題点を解明した。
また、自分自身でラオスへ旅行した経験を元に、列車や飛行機の切符の買い方を解説した。
さらに機内の過ごし方、海外で出会った人との付き合い方、ホテルの選び方なども書いた。
誰でも知りたがる海外旅行の基本を、実例をあげてクリアに解説したわけだ。
もちろん、これもまた、今まで誰も書けなかった「マイレージは金持ちだけのもの」や「貧乏旅行上手では女にモテない」、「日本人は人種差別されていない、馬鹿にされている」など、鋭い指摘が満載。
当然売れに売れていいはずのものだった。
ところが、この第二弾も100万部行かなかった…。
そこで僕が思ったのは、日本人はとにかくセックスが大好きな民族。
本の最初から最後までセックスネタでまぶせば、絶対に100万部売れる、ということだ。
「大人の海外個人旅行」が「大人」というタイトルがついている理由は、もちろん中身が「オトナのお話」でぎっしりだったからだよ。
ところが、この第三弾も100万部行かないわけだ(涙)。
本屋に行けば、ちょっと東南アジアを旅行しただけの三流ライター諸君が書いた本が山のように積んである。
頭の悪い、社会のオチコボレ連中の、馬鹿馬鹿しい、反吐の出るような、建前だけの、勘違いした本が並んで売られている。
もちろんいくら本を書いても、著者がもともと馬鹿なのだから、彼らの本は馬鹿にしか売れない。
著者も読者も馬鹿で、馬鹿話を喜び合っているわけだけどね。
僕のような本物の世界旅行者の本が、100万部売れないのは、絶対におかしいわけだ。
そこで、100万部の本を売るのは止めて、テレビのコメンテーターになって名前を売って、講演活動で金を稼ごうと考えて、テレビ局からの連絡を待っていたわけだ。
もちろん、ただぼーっと待っていてはダメだ。
コメンテーターの練習をしていた。
どんな話題に対しても、「アメリカでは、○○ですからね。日本でも、もっと考える必要があるでしょうね」とか「みんなで、もっと話し合うことが大切でしょうね」とか、当たり障りのない、全く中身のないことを言うような練習もしていたのだ。
僕が友人から、「話がつまんなくなった」と言われたのは、もちろん、テレビのコメンテーターの練習をしていたからだったんだよ。
しかしなぜか、テレビ局からも話が来ないんだ。
本を三冊も出して、テレビ局からも話がなければ、このまま本を何冊も書いて、書き続けて、最後は「ただの作家」になってしまう。
それではだめだ。
だって僕は、なににもなりたくなかったんだから。
僕は自由でいたかったんだから…。
世界旅行者は悩む。
すると、神は、行く道を指し示してくれる。
テレビを見ていると、2002年の春のテレビコマーシャルに、いやに上海の映像が多かったんだよ(覚えているかな)。
テレビのコマーシャルに上海をテーマにしたものが多い。
それは、当然、神が世界旅行者に、啓示を与えているわけだね。
「世界旅行者よ、上海へ行け!」ってね。
そうして、世界旅行者は、上海へ行かなければならないと、決意を定めた。
しかし、普通に行っては世界旅行者の旅ではない。
もちろんその前に、神は様々な障害をおき、世界旅行者を試されたわけだ。
世界旅行者は、神によって選ばれ、神によって定められた人生を生きる。
だから、もちろん、そのすべての試練を受けなければならないのだ。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20081123#p1
(「世界旅行者・海外説教旅」001)