《上海へ行くには、どうしても船でなければならない。それも新鑑真号で》

【新鑑真号にて】
読者はとても信じられなくて、驚いて腰抜かしたり、おしっこちびったりすると思う。
しかし、告白すると、僕は上海に行ったことがなかった。
世界旅行者といえば、世界のすべての地域に足跡を残した、そのすべての町で、何か一つはオモシロ話を作ってきた、旅行の天才だ。
その世界旅行者先生様が、近場の上海に行ってないなんて、それはおかしい。
みんながそう思うだろう。
また、その理由を知りたがるはずだ。
お答えしておきます。
僕の気持ちの中に、「上海にはカップルで行かなければならない」という強迫観念があったんだよ。
上海といえば、共産中国が成立する前まで、東洋のパリと呼ばれた、文化、ファッション、流行の中心地だった。
ずいぶん前にちょっと流行した、吉田日出子の「上海バンスキング」という舞台劇があった。
上海を舞台にした悲しい恋物語だ。
それをテレビで見ていたころ、僕の隣には、そのころ結婚していた、非常に魅力的な美女の姿があった。
そのとき、「上海へ行って、天井の高いダンスホールで、ジャズを聞きながら、女の子とダンスを踊る。これが上海の楽しみ方だよねー♪」とのイメージがインプットされてしまったんだね。
その女性とは別れてしまって、それ以来、一緒に上海へ行く女性が見つかってなかった。
ちょっと注意しておくが、僕のまわりに女の子がいなかったわけでは決してないよ。
これを読んで、「私が世界旅行者さんと一緒に上海に行くー(もちろん、世界旅行者さんのオゴリで)!」と思う女の子がたくさんいると思うからさ。
はっきり書いておくけどね、僕が女の子と海外旅行に出るときは、必ず、ワリカンなんだ。
女の子に金を払うなんて死んでも嫌な、それが僕、男の中の男、世界旅行者なんだからさ。
だいたい、僕のエッセイにも、20歳ちょっとの有名SMモデルと一緒にハワイに行った話がある。
その時だって、きっちりワリカンだったんだ。→《亜美ちゃんロープに文句をつけるの巻》
つまり、厳密に言うと「僕と一緒にワリカンで上海へ行ってくれるきれいな(かわいい)女性」が身辺にいなかった、というわけなんだ。
僕のまわりには、たくさんの女性がいる(というか男性の友達はほとんどいない)が、ほとんどは貧乏だ。
金持ちの女性も、僕と付き合っていると、なぜか貧乏になる。
貧乏というものは、伝染するのかもしれないね。
まあ、これは、将来の研究課題としておこう。
というわけで、上海は、ワリカンで行く女性が見つかるまで、わざわざ取っておいた特別な町だったんだね。
しかし、僕もだんだん歳を取り、若い女の子とワリカンで海外旅行に出る可能性は、非常に少なくなった。
でも、大金持ちの芦屋のお嬢様、奥様が高級高額ツアーに飽きて、バックパック旅行をしてみたいというご希望の場合もあるでしょう。
そういう場合、旅費、宿泊費、食事代、ビール代、それに同行費用を払っていただければ、一緒に旅に出ることも可能です。
是非、ご連絡ください。
日本のテレビのコマーシャルで、連日上海の風景を流されると、これはもう上海から逃げてばかりもいられないさ。
だって、人間は、いつか死んでしまうんだから。
ま、何かの事故であっさりと死んでしまうこともある。
その前に、運がいいのか悪いのか、歳を取ると、身体が動かなくなっていって、海外旅行なんかとてもとても無理になる場合もある。
いつまでも過去のイメージ、思い込みにとらわれていてはダメだ。
なんでも、思い切って、やった方が勝ちだ。
と、僕は上海へ行くことを決める。
さて、上海には、もちろん成田から飛行機が出ている。
しかし、上海へ飛行機で行くようでは、とてもまともな旅行者とは言えないね。
上海は国際港なのだし、昔は上海は日本と船で結ばれていた。
上海航路は日中のメインルートだったのだから、ここはどうしても船で上海に入らなければならない。
船は上海の中心地、町のど真ん中、長江(揚子江)からちょっと入った黄浦江沿いの上海国際フェリーターミナルに到着する。
船で揚子江を通って、上海の中心地へゆっくりと進んでいって、その川岸の風景を見る。
これは、絶対に感動的だよね。
こうでなくては、上海へ行く意味がない。
また船で町のど真ん中へ入れば、中国入国の最大の問題点、つまり空港から町の中心へ行くときにタクシーでぼられる、ということもないわけだ。
さらに、二泊三日の船旅の中で、旅行者と知り合えるだろうし、彼らから中国の旅行情報は嫌になるほど入手できるだろう。
そこで船を調べると、これはとても簡単に見つかる。
日本から上海への船は、新鑑真号と蘇州号の二つのフェリーがある。
インターネットにはウェブサイトもあって、設備や料金、出港日などが簡単に調べられる。
新鑑真号→  http://www.shinganjin.com/
蘇州号→ http://www.shanghai-ferry.co.jp/
新鑑真号は、毎週火曜日に出港、一週おきに大阪と神戸から出で、木曜日の昼に上海着。
蘇州号は、大阪を金曜日の昼に出て、日曜日の昼に上海着。
船の大きさも、設備も、運賃もたいした違いはない(片道2万円程度、往復割引アリ)が、ここは、新鑑真号を選んだ方がいい。
というのは、新鑑真号の前の鑑真号という船は、以前、日本から中国への航空運賃がまだ高かったころ、バックパッカー御用達の伝説の船で、やはりここは「鑑真」の名前のついた船に乗っておかないと、話のネタにならないからなんだね。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20081124
(「世界旅行者・海外説教旅」002)