《新鑑真号では、素晴らしい出会いが次々に起きる》

コスモスクエア駅に着いてエスカレーターを上がると、そこにはすでに数人の大きな荷物を持った人たちがいた。
どうやら、ここにバスが来るらしい。
時刻表を見ると、バスは、国際フェリーターミナルに船が着く日だけ、特別に動いているようだ。
9時半に最初のバスがやってくるころには、長い列が出来ていて、次々に乗り込む。
すぐ満員になる。
ターミナルに着くと、ターミナルとは名ばかりで、中には売店もなく、もちろん免税品店もなく、非常に感じの悪い殺風景な待合室があるだけ。
カウンターでボーディングパスをもらっうが、待っていても何もすることがない。
椅子があちこちにあるだけで、それに比べて乗客が非常に多いので、一度座ったら立ち上がらないようにしないと、席を取られてしまう。
こういう時は確かに、バックパックを持ってきてよかったと思う。
いざとなればバックパックを床において、バックパックに腰を下ろせるからね。
同じ感じの旅行者はいないかと見回す。
乗客は里帰りの中国人が多いのと、日本人の団体旅行もいる。
日本人のバックパッカーらしき旅行者はほとんどみつからない。
前回の、神戸から出港のときは、ほとんどバックパッカーで、バックパッカーが多すぎて、逆に話しかけるのを抑えたんだけれどね。
乗船して、僕が指定された、二等の洋室612号に案内してもらう。
二段ベッドの8人部屋で、中央通路を挟んで、両側に4つずつのベッドがある。
入り口のドアを開けたところに、棚があって、そこに荷物を置けるようになっているが、かなり小さい。
僕のベッドはドアを開けて入った左奥の下側の8番ベッド。
部屋に入ると、僕のベッドの上段に一人の日本人の若者がいて、荷物を開けていた。
「こんにちわー、よろしくお願いしまーす♪」と、声をかける。
旅先ではとにかく、ドミトリーの宿や寝台車、船室などで、しばらく同じ空間、時間を共にする人とは、嘘でも嫌いでもある程度の人間関係を作っておくことが大切なんだからね。
というのは、この部屋には自分の荷物を置きっぱなしにするわけだし、僕自身がいつも部屋にいるとは限らない。
というか、寝る時以外は僕がベッドしかないこの部屋にいることはほとんどないだろう。
だから、荷物を見張ってもらう(ちょっと注意しておいてもらう)ためにも、人間関係を作っておいた方が有利なんだ。
旅行経験が多ければ、それがわかっている。
とにかく適当に挨拶をして、互いにある程度の人間関係を作ろうとするものなんだよ。
ところが、この若者は、「あ、どーも…」と返事しただけで、ベッドのカーテンを閉めてし閉じこもってしまった。
「こいつはダメだなー。つかいものにならない。10点!」と僕はすぐに点数をつけた。
もちろん10点というのは、100点満点の10点だよ。
人間に点数をつけるのは、何をするにもなかなかわかりやすく便利だ。
世界旅行者ファンの皆さん、この文章を読んでいる人たち、ま、ファン以外は読んでないと思うけどね(笑)、覚えて置いてください。
さて、人間には大きく分けると二種類あって、それが男性と女性だ。
で、世界旅行者のポイントでは、男性の基準点は50点、女性は100点となっている。
だから、男性と女性と会う約束がダブったときなどは、点数を比較すれば迷うことがない。
普通は、女性の方が点が高いので、もちろん、女性と会うことになるわけだよ。
でも、男性でも世界旅行者におごってくれる場合は、点数がプラス100点、となって、すぐに150点に跳ね上がる。
だから、おごってくれる男性は、普通の女性よりもぐぐっと点数が高いので、是非御連絡ください。
一流大学の知的な美人女子学生または女子大学院生(はっきり言うと、頭のいい人しか僕を好きにならない、というか頭の悪い人は僕を好きになれない)はポイントが高い。
世界旅行者にタダでセックスさせてくれる場合、これは、プラス1000点なので、安心していいです。
ここで、「えっ、点数は100点満点じゃないんですか?」などと、どうでもいい細かいことを言うと、即座にマイナス1万点が付きますから、注意してくださいね♪
次々に旅行者らしい若者が、部屋に入ってきたが、みんなどうも基本的な挨拶も出来ない人ばかりで、全体的に暗い感じだ。
これが今の若い人たちの普通のタイプかもしれないね。
実は、僕が異常に人付き合いがよく、話が面白い。
その源が大学時代のユースホステル(YH)活動にあることを、ここで告白しておこう。
「これが正しい海外個人旅行」の序文にも書いておいたのだが、僕は大学時代に京都のユースホステルグループに参加していた。
そして、ユースホステルを利用して、日本中を旅してまわっていたんだよ。
そのころのユースホステルでは、ミーティングというものがあって、夕食後に若者が集まって、歌ったり、踊ったり、ゲームをやったりして、仲良くなっていたものだ。
それが、一つの「ユースホステルタイプの人間」というのを製造していたのだと思う。
ある意味では僕はその「ユースホステルタイプの人間」の典型なんだよなー(苦笑)。
つまり、とってつけたように見知らぬ人とすぐに仲良くなることができる。
また逆に、親しくなった、盛り上がった状況を、すぐに忘れてしまえる。
まあ、そのころの状況を思い出せば、一つのYHで盛り上がっても、翌朝はそのことはあっさりと忘れて、別のYHでまた盛り上がる、これを繰り返していたわけだ。
そのころのユースホステルには、ある意味で、日本の若者の中の、一種特別な文化があったのだと思う。
それは、急激に燃え上がって、あっという間に消えてしまったのだけれどね。
今では滅びてしまった。
まだ日本の辺鄙な場所のユースでは、そのころの思い出を捨てられないのか、わけのわからない人たちが集まって、昔ながらのことをやっているとか…。
ただ、参加者が中年のおじさんばかりだというのが、哀しいけどね。
革命グループに参加したまま歳を取って、あいわらず内ゲバを繰り返している人たちみたいだ(涙)。
というわけで、同じ部屋に泊まる日本人の若者たちが、旅慣れてない、オタクっぽい連中だと見切りをつけた。
僕は出港を見学しに、僕は部屋を出てパブリックスペースに出て行った。
するとそこに…。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20090227
(「世界旅行者・海外説教旅」015)