《陸路国境を越える時に、一番大切なこととは…》

【中越国境の河口側に立つ】
僕は中国河口の出入国管理事務所で、国境を越えようとゲートへ進んでいる時に、ぐいっと後ろへ引っ張られた。
そして、国境警備隊の隊員は、僕をゲートから押しのけて、後ろへ連行した。
さて、僕の頭には数限りない国境越えの経験がインプットされている。
どういう場合でも対応できるように、すでにシステムが出来上がっているはずだ。
パッと頭に浮かんだのが、イランからトルコへ抜ける山の上の国境検問所のこと。
だって、こういう状況で、考えられることは唯一つしかないのだから(それは引き続き読んでください)。
イランのマークーという絶壁にはさまれた小さな町で一泊して、翌朝、乗り合いタクシーでイランの国境エリアのゲートの前まで来る。
タクシーで乗り付けたゲートを越えたところから国境地帯。
それをさらに山の上まで登ったところに、正規の出入国管理事務所があったんだ。
ゲートを抜けたところに交通機関が見つからなかったので、歩いて山の上まで行こうとした。
ゆっくりと歩きながら、途中の道端で立小便なんかをする。
するとそこへバスがやってきたので、手を上げて、バスを呼び止めて乗る。
これがゲートからイミグレーションまで行くバスだったんだよ。
山の上の事務所でバスを降りたが、他はみんなイランの人ばかり。
その人たちはまた、なにか書類をもらいにぞろぞろと建物へ入っていく。
僕も入って行ったが、そこはペルシャ語の掲示があって、みんながペルシャ語の書類をもらっている。
外国人には、完全に場違いな感じがするね。
日本人である僕は、おそらくイラン人用の書類は必要ないだろうと思う。
でも自分が出国のために、どこへ進めばいいかわからない。
困り顔をしてボケーっと立っていると、イラン人が建物の入り口を指差すので、そこへ入る。
誰もいないので、日本語で「すみませーん、誰かいますかー!」と大声を出したら、愛想のいい役人が出てきた。
そして、僕の日本のパスポートを見て「ナカタ!」と大声を出して、荷物を開けるように言う。
僕は、おかしいなと思った。
というのは、イラン入国の時はかなり厳しく荷物を改められた。
普通は出国の時に荷物なんか調べないものだからね。
だから、「僕はトルコへ行くんですけど」と英語で言うと、返事が「ここは違う!」で、建物の反対側を指差されたんだ。
僕はトルコへ抜けたかったのに、逆方向の、トルコからイランへの入国の税関に来てしまっていたわけだよ。
まあ、そんな入国と出国を間違えたなんてマヌケなことは、この時だけだったけどね。
読者も、出国と入国を間違えたなんて話は、あまり聞いたことがないだろう。
僕もあまりに恥ずかしいので、誰にも言ってないんで、これはナイショだよ。
河口の出入国管理事務所の話題に戻るが、まさか、こんな単純な国境で出国と入国のゲートを間違うはずがないよね。
しかし、よく見ると、確かに僕は「入境(入国)」の方に進もうとしていた。
単純に、入り口を間違えたので、引き戻されただけなんだよ。
マヌケな話だよね…(涙)。
そこで今度は指差し確認して、確実に「出境(出国)」とある方へ進んで、問題なく出国スタンプをもらった。
中国の出国手続きを完了して、国境の橋へ進んだ。
建物を出ると、すぐに橋があるが、この国境の橋も、朝からけっこう賑わっているよ。
自転車に付けたリアカーに山のような荷物を積んで、ベトナム人が3人がかりで押している。
その男性が、ベトナム戦争の記録映画でよく見たように、痩せている。
頭にはあのベトナム兵のつばの広いヘルメットをかぶっているのが感動的だね。
「ベトナムへ来たぞっ!」という感動が、身体の隅々まで広がるよ。
橋の手前で、若い中国人カップルにベトナム側をバックにして写真を取ってもらう。
彼らは、おそらくは日帰りでベトナム観光をする中国人なのだろう。
河口では、中国人の1日ベトナム入国の観光が盛んなようだしね。
僕はそのまま、ゆったりと、国境越えの感動を味わいながら歩いた。
橋を渡り終えた右側の、緑色の屋根の平屋に入る。
これがベトナム側の入国管理事務所だ。
事務所入って、ベトナムの入国カードに記入して、それを女性の職員に提出して、パスポートを渡す。
カウンターを越えた向こう側のパスポートをもらう待合室へ入る。
すると、「あれー、西本さん!」と声がかかる。
あれーっ、世界旅行者の名前は、中越国境にまで知られていたのか。
さて、声をかけたのは誰か?
また、世界旅行者はこのあと、どうやって、両替し、バスを見つけ、サパへと到着するのか??
それは次回のお楽しみ。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20081028#p2
(「世界旅行者・海外説教旅」#55)