上海〜バンコク旅行記(2002)より、第68話。《翌日の寝台車予約、ネットカフェ、ぼったくり絵葉書売り、そして恐怖の靴磨き少年》

【ホアンキエム湖の北にある、カウゴー(Cau go)通り】
朝4時にハノイ駅へ到着してから、ホテル(ホンゴックホテル)を決め、明日のハロン湾ツアーを申し込んだ。
床屋で髪を切って、ホテルへ戻り、シャワーを浴びる。

また町へ出て、ドルのトラベラーズチェックをドルの現金とベトナムドンに両替した。
次にやることは、ハノイからフエへの明日の夜行列車の予約を取ることだ。

ハロン湾ツアーを申し込んだ「Love Planet」へ行って相談する。
ハロン湾ツアーがハノイへ戻ってくるのが、午後7時ごろという。

この時期(2002年8月)ハノイからフエへの夜行列車のリストを見せてもらう。
列車番号(出発時刻)が、S1(19:00)/S9(19:30)/S3(20:30)/E1(23:00)となっている。

ハロン湾一日ツアーからハノイへ戻ってくる時刻が7時とはいっても、当てにならない。
とすると、S3かE1に乗ることになるだろう。

ラオカイからハノイへの列車がソフトスリーパー(軟臥/一等車)だったのにエアコンがなかった。
そのせいでほとんど眠れず、いまもボーッとしている。

眠れない寝台車は最悪だから、とにかくエアコンつきの寝台車が第一希望だ。
「どれでもいいから取れる切符を取ってくれ」とお願いした。

もし取れなければ、さらに翌日の切符を取ってくれるように頼む。
これはもちろん自分でも駅の窓口で取れると思うのだが、駅へ行くのも面倒だしね。

僕はサパの旅行代理店でラオカイからハノイへの列車の予約を取ってもらった。
その上、ハノイのバックパッカーストリートを歩き回ったことから、ベトナムの旅行のシステムについては、すでに理解していた。

ベトナムでは、泊まっているホテルや、旅行代理店に頼めばすべてうまく行く。
ここは下手に自分で動かずに、旅行代理店に頼った方がいい。

ベトナムでは、旅行者が泊まっているホテルも、間違いなく旅行代理店業務(の代理)をやっている。
僕の泊まっているホンゴックホテルでも頼めるだろう。

ただ僕は、あまりにホテルに頼りすぎると、なめられてボッタクられると思った。
その点、「Lonely Planet」にも紹介してある旅行代理店ラブプラネットならば、ひどくボルことはないだろう。

列車の切符が取れるかどうかは、明日にならないとわからない。
明日切符が取れれば、そのまま列車に乗ってしまうつもり。

明日朝、ハロン湾ツアーに参加するときに、ホテルをチェックアウトして、僕のバックパックをラブプラネットに預かってもらう。
ハロン湾ツアーから戻って、ラブプラネットへ来て、切符が取れていればそのまま駅へ行く。

という風に考えた。
明日の切符が取れなければ、その時にホテルは考えよう。

旅がいいのは、せいぜい翌日のことを考えていればいいこと。
翌々日のことまで今日考える必要はない。

だって、明日何が起きるかわからないんだからね。
そういう意味では、旅はその瞬間瞬間を生きているわけだ。

瞬間を生きる人間には、悩みというものが存在しない。
悩みとは、将来への不安なのだから。

例えば、旅に出て、「日本に戻ったらどうしよう?」と考えているようでは、本物ではない。
本物の旅人は、そんな日本に帰ったあとのことなんか考えないものだ。

旅人は今日のことと、せいぜい明日の予定しか考えないんだ。
旅人にとっては、明後日とは「永遠に来ないかもしれない未来」のことだからね。

さて、これで一応明日までの手配は済ませた。
次に、時間つぶしに、ハンベー(Hang Be)通りのネットカフェへ入ってみた。

【ハンベー(Hang Be)通りのネットカフェ】
僕は原則的に、旅に出たらインターネットにはアクセスしない。
だって、せっかく旅に出ているのに、日本でもいくらでもできるインターネットをするのは「時間と金の損」だからね。

ただ最近は、世界各地にネットカフェがたくさんできている。
バックパッカーの集まる場所には必ずネットカフェ(サイバーカフェ)がある。

そして特に、欧米人旅行者は長時間モニターの前に座って、忙しくキーボードを叩いている。
2007年にグアテマラのフローレス島へ行ったときも、ネットカフェだけに欧米人が集まってたからね。

僕の印象では、彼らは何か旅先から仕事をしているんじゃないかな。
僕が見たてきぱきとした様子からは、とても友達とメールを交わしているだけには思えなかった。

これについて、何か新しい情報があれば、是非教えてください。
というわけで、僕もネットカフェに入ってみた。

出版社から新しい本についての連絡が来ているかもしれないしね。
そういううれしい話はなかったが、メールはたまっていたので、読むべきものは読み、返事した方がいいものは返事しておいた。

しかしだね、海外から電子メールをもらって面白いかな(笑)。
もちろん海外から連絡を取るならば、絵葉書を送ったほうがいい。

ホアンキエム湖の近くを歩いていたら、絵葉書売りが声をかけてきた。
彼は10枚1セットの小型の絵葉書を売っている。

その値段は、最初の言い値が、1セット5ドル。
信じられないくらいのボッタクリだよ(笑)。

しかしもちろん、どんどん下げてくる。
1セット5ドルが、4ドル、2セットが6ドル、すると、1セットで3ドル、2セット5ドル、4ドル。

もともとの値段がミエミエのボッタクリ。
だが、これだけ下がってくると、人間不思議なもので、そろそろいい値段かなと思ってしまう。

2セット3ドル(1セット1ドル半)で買うことにした。
でも、そのすぐあとに、本屋へ入ったら、同じ絵葉書が、1セット1ドルで売ってあったよ(涙)。

次に声をかけてきたのが、靴磨き少年だった。
実は、この付近を歩いていると、次々と靴磨きから声をかけられるんだ。

いちいち断るのも、疲れる。
日本人というのは話しかけられて無視するだけでも、精神的に弱っていくんだ。

それがとてもウザッタかった。
それで、つい、「靴を磨いてしまえば、靴磨きも声をかけてこないだろう」という発想が浮かんだ。

まるで「自殺するんじゃないかと心配しすぎて、これ以上心配しないために自殺する」ような変な考えだ。
思い出して欲しいが、僕はラオカイからハノイまでの夜行寝台列車でほとんど寝てない。

しかも朝からいろんな用事を次々と済ませていって、ちょっとホッとしたところ。
それならば、ホテルへ戻ればいいだけだが、ホンゴックホテルは、バックパッカーストリートからはちょっと遠い。

軽く横になるために部屋へ戻るものも疲れるんだ。
夕食はハンベー通りで軽く食べるつもりだしね。

そういう点では、ホンゴックホテルはバックパッカーが使うにはちょっと遠いかもしれないね。
部屋もいいし、朝食もいいし、スタッフもイケメンなんだけど。
つまり僕は、睡眠不足で、正常な判断力がなくなってたんだよ。
またそこをうまく突いてくるのが、ベトナムのボッタクリ靴屋だ。
僕はこのとき、ロサンジェルスで買った革靴を履いていた。
かなり古いうえに、僕は靴を磨かない人間なので、確かに汚いのは本当なんだよ。

で、靴磨きの少年は、5千ドンと声をかけてきた。
5千ドンは40円くらい。

それを一応値切って、3千ドン(24円)にする。
靴を持って逃げられないように、見張りながら、道端で磨いてもらう。

ところが、僕の靴は靴底にヒビが入っていた。
実は、この旅で履き潰してしまおうと考えていたくらいのおんぼろ靴だ。

この少年は、その靴底の割れ目を見つけて、すぐに「これは修理しなければ」と(片言の英語で)言う。
そして、接着剤を靴底のヒビに流し込んでくっつけた。

僕はそれを、ボーッと眺めていた。
さて、靴を磨いて靴底に接着剤を入れて、少年は「靴の修理代を含めて、5ドルだ!」と言う。

おいおい、5ドルもあれば、ベトナムでは立派な革靴のニセモノが買えるよ。
僕は4ドル、3ドル、2ドルと5千ドンと下げていった。

しかし結局、3万5千ドン(280円)で決着した。
正直、靴底の割れ目を修理してもらったというので、うれしかったんだよ。

ただ、靴を履いて歩いていって、ホテルへ戻ってみたら、元に戻ってたけどね(笑)。
結局、最初から靴を磨かなければよかったんだよね。

参考: ベトナム鉄道時刻表(英語)
現在の列車時刻や列車番号は2002年夏のものとは違っているようですが、参考にしてください。
ネットで予約もできるみたいです。

【旅行哲学】古い靴は磨くだけ無駄。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20080315