『世界旅行者は、世界各地から絵葉書を送った経験をもとに、絵葉書の本質を論じる』

【ホテル加宝の部屋で絵葉書を書く】
僕はこうして、無事に銀行口座を作った。
サッポロビールの生樽の2リットルをぐいっと飲みほして、幸せな眠りについた。

僕は、次の日にやるべきことをした。
それは送金依頼の手紙を書くことだ。

日本の僕の銀行口座にはまだ数億円のお金がすやすやと眠っている(ウソですよー!)。
これを実家に頼んで(キャッシュカードを預けておいたので)引き出してもらい、それを昨日つくったばかりの加州住友銀行の口座へ送金してもらう訳だ。

リトル東京の土産物屋へ行って、ポストカードを手に入れた。
一枚はリトル東京の名物のコンクリート製の櫓が写っていて、いかにも外国製という雰囲気の活字で「リトル東京」と文字が入っている。

一般の観光客には受けないだろうが、僕の趣味にはぴったりだ。
僕はこういうのも何だが、絵ハガキを出すプロだ。

僕はいままで旅行した世界中のほとんどの町から絵ハガキを出し続けてきた。
絵葉書はなかなかいい記念になるよ。

思いがけない切手が貼ってあったりするし、何よりも荷物にならないからね。
僕は海外からの絵ハガキをもらうのが趣味なんだけれど、海外へ行く人には必ず注文を出す。

「出来るだけ、絵ハガキ絵ハガキしたやつを送ってよ。ニューヨークなら自由の女神かエンパイアステートビル、パリならエッフェル塔、北京なら紫禁城」ってね。

海外に出た中途半端な旅行者のなかには、訳の分からない、どこから出したのかさっぱり分からない芸術的なカードを送りたがる人もいる。
これは間違っている。

やはり絵ハガキには絵ハガキの使命というものがある。
それは誰が見ても「オ〜、ここにいるのか!」という情報を伝達する機能だ。

ビーチに行けばビーチ、ヨーロッパの町なら有名な教会、アフリカなら野生動物というパターン化したものがいい。
読み返した時に興味深いし、もらった方も自分のイメージ通りで感激するものだ。

この方式で行くと、ニューヨークなら地下鉄の強盗、LAならカーチェイスの絵ハガキをつくればいい。
が、なぜかこういうイメージ通りの絵ハガキはないようだ。

この点、イギリスはなかなか洒落のきついところなので、パンクの女の子が男子便所で立ち小便をしている絵ハガキを売っていた。
あまり知られていないが、イギリスの名物は本物のパンクファッションなのだ。

もちろん僕は、このいかにもロンドンぽい絵ハガキを買って、自分宛に送った。
なぜかというと、他人に送ると、変態だと思われそうだったから。

なかには、自分は人より変わっていると思い込んで(まあ、こんなことを思うこと自体がありふれた人間だということだけれども)どこへ行っても真っ黒な絵ハガキを出し続ける人もいる。
どこにでも売っている「NYの夜」とか「LAの夜」とかいう例の真っ黒のハガキだ。

これはもう誰でも知っている絵ハガキなので、今どき使うのは恥ずかしいし、後で見ても何の感激もない。
感激があるとすれば、「あの頃は馬鹿だったな〜」というほろ苦さだけだろう。

さてそういう訳で、ぼくはリトル東京にいる訳だから、いかにもリトル東京という絵ハガキとLAの高層ビルの絵ハガキを2枚送ることにした。

なぜ2枚送るのかって?
それは次回のお楽しみ。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20080521#p1