『日本の旅行ガイドブックとは、旅行を知らない人たちが、作っているのでは?』
「ホテルダイマル」は、そのころ有名だった旅行ガイドブック「地球の歩き方」に、ほめまくって書いてあった。
その頃の紹介文を詳しくは覚えていない。

だが、書いている人間が旅行経験が少ないことだけはわかった。
念のために「地球の歩き方」の92〜93年度版を見てみる(実は、この文章を書いたのは、1993年です)。
「ホテル大元」の悪評が少しはこの編集部にも届いているらしく、この時期のほめ方は結構おとなしい。

>>リトル東京内にあるので何かと便利だし、バックパッカーや長期滞在者が多いので、旅の情報交換もできて楽しい。
>>部屋は質素だがこぎれい
>>マネージャーがとても親切で、奥さんは日本語も話せる

と、いかにも中身のない、抽象的で無意味な言葉が羅列してある。

面白いからこの言葉が実際は何を意味しているか、検証してみよう。
まず「リトル東京内にあるので何かと便利」とは何だろう。

全く無意味だ。
リトル東京内にあるから日本食レストランや土産物店がすぐそばにある。

でも、旅行をするのにこんなものがすぐ隣や向いにあったところで何か意味があるだろうか?
ちょっと2ブロックぐらい離れたところにあろうが、すぐ隣にあろうが関係ない。

次に、「バックパッカーや長期帯在者が多い」というのもおかしい。
「バックパッカー」というのはテントや寝袋を担いで旅行する旅行者のことだ。

泊まる時には野宿をしたりテントに泊まったり、ユースホステルやバックパッカーズのような共同部屋に泊まる。
日本人が単純にバックパックを背負っているだけで、リトル東京の安ホテルのシングルルームに泊まっている場合、それは本当のバックパッカーとは呼べない。

ユースやドミトリータイプの安宿に泊まらずに、日本人だらけのリトル東京で日本語のガイドブックに書いてあるホテルのシングルルームにわざわざ泊まるような旅行者をバックパックを背負っているだけでバックパッカーとは呼べない。

ここで言う「バックパッカー」とは、単に大げさな格好をした旅行者という意味しかない。

また「長期滞在者が多い」というのもおかしな話だ。
本当の長期滞在者は他のもっと安くて設備のいい、長期滞在者用のホテルに泊まるものだ。
ダイマルに泊まっているのは、他のホテルに移動する考えも浮かばない人たちが多い。
日本からロサンゼルスに旅行に出たが、他の場所へ旅行を続ける気力がない人たちが、ここの長期旅行者だ。

こういう人たちは、他にいいホテルがあると教えても、動こうとはしない。
「地球の歩き方」を最高のガイドブックと信じて疑わないからだ。

またもちろん、「旅の情報交換」は誰とでもできる、
ただ、旅行経験の少ない人たちが、情報交換をすると、かえって危ないことになる。

この「ホテルダイマル」は旅行に関しては、日本から出たばかりの学生さんが多い。
情報交換といっても、だだのよくある旅行初心者同士の見栄の張り合い、嘘のつきあいに過ぎない。

また旅行初心者が多いので、自分の旅行経験を自慢するためだけにこのホテルに泊まる人もいる。
それをレポーターが見破れなかっただけだ。

「部屋は質素だがこぎれい」とは、他に褒めようがないからだ。
「部屋にはテレビもテーブルも椅子もなく、あるのはベッドだけで、ほめるとしたらこぎれいというしかない」ということ。
ここはメイドもいないし部屋の掃除もしないので、「こぎれい」とはよく言ったものだね。
「マネージャーはとても親切」というのは、これはちょっと問題だ。
マネージャーは日本語もしゃべれない中国人。
「奥さんは日本語もしゃべれる」と書いてある「中国人の奥さん」が日本人の相手をしている。

この奥さんがいろいろと日本人相手に酷いことをしたという話がとても多い。
僕が知っているだけでも、銀行口座を作る手助けをしたことを恩に着せて、車を売りつけようとしたと聞いた。

中米への切符を頼んだら、それに手数料を上乗せしていたという話がある。
しかも、これは噂ではなくて、僕が個人的に知りあって、じっくり話し込んだ旅行者本人の話なのだ。

暖房設備もない薄暗い狭い部屋しかないホテルをこれだけほめて書けるのすごいね。
しかし、僕が再度このホテルへ戻ってきた時は、まだそのことに気付いていなかった。
だからここで、しばらく過ごすことになってしまったのだ。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20080522#p4