1988年の日本人の米国旅行と、旅行者のパターンを論じる

【ロサンジェルスの椰子の並木】
僕が今まで日本人旅行者と出会って話をしてきたのは、主にヨーロッパやアフリカやアジアだった。
アジアは別として、ヨーロッパやアフリカというのは、一応それなりの旅行の目的があって行くところだ。

ヨーロッパでもアフリカでも、見るべき場所が決まっている。
何も考えずに、見るべきところを見ていれば、それなりの旅行のカタチがつく。

ヨーロッパでは狭い地域に見なければならない町がいっぱいある。
アフリカへ行く場合は、もちろん動物を見るとか、自然を見るとかの理由があるだろう。

ところがアメリカはちょっと違う。
アメリカという国はとにかくだだっぴろい。

その上に、町と町が離れていて、ヨーロッパのように気軽に移動できない。
どのようにでも旅できるので、ルートを決定すること自体を、自分で考えなければならない。

それで自分の旅行に対する考え方が決まる。
もちろん「地球の歩き方」にはアメリカ一周のルートが紹介してある。

「地球の歩き方」の旅行ルートは、これは当然頭ででっちあげたものなので役にはたたない(笑)。
本の通りに旅行しようと考えても、もともと無理なので、結局途中で変更することになる(涙)。

現在ではアメリカ旅行は飛行機を利用して、要領よく見て回ることが一般的になった。
でもまだ1980年代は、グレイハウンドバス乗り放題のパスを利用してアメリカ一周するのが常識だった。

だから旅行者の本質が現れてしまうことになった。
実は、日本からアメリカへやって来て、バスに乗って旅行をするということは、簡単じゃないよ。

日本にいて単純に考えるほど、楽なことではない。
カリフォルニア州自体が日本と同じ位の大きさなのだ。

アメリカ旅行をするためには、バスに長時間乗り続ける体力と根性が必要だ。
また、アメリカの町は非常に人工的に作られていて、正直どこも似たり寄ったりだ。

もちろんニューヨークとロサンゼルスは、その性格がはっきり違う。
サンフランシスコも、ニューヨークやロサンジェルスとは大きく違っている。

あとはサンアントニオとかニューオーリンズがちょっと変わっているかな。
が、これも町の一部分をわざわざ観光客用に保存したものなので、町並み自体が興味を引くようなところではない。

結局、アメリカで見るところはディズニーワールドなどのテーマパークかな。
それと、高層ビル群や大型ショッピングモールの人工物。

また、ナイアガラやグランドキャニオンの大自然ということになるだろう。
世界中のほかの地域にある定番の「歴史的な町並み」や「遺跡」というものが無い。

しかも、アメリカ旅行に出る学生は、ほとんど何も考えていない場合が多い。
みんなが卒業旅行に出るのでどこかに行かなければならない。

その時に何にもアイディアの湧かない学生は、なんとなく「アメリカがいいかな〜」と思うものなのだ。
これは繰り返すが、「1990年ごろの話」だけどね。

2008年になると、学生は東南アジアへ行ってるんじゃないかな。
東南アジアなんか、若者には何の知的刺激も与えないと思うけどね。

そのころアメリカにやって来た旅行者は、3つのタイプに分類できた。
ひとつはアメリパスを利用するだけ利用して、どんどんアメリカ中を走り回るまともな旅行者。

ヨーロッパからNYに飛んで、カナダ東部を手始めにアメリカ中を走り回って、最後には西海岸をカナダのバンクーバーまで北上し、またLAへ戻ってきた僕のような旅行者だ。

もうひとつが、ちょっと動いたがアメリカのあまりの広大さに圧倒されて(バスに乗るのに疲れて)アメリカ大陸横断の途中で帰ってくる旅行者。
LAを起点にしていればニューオーリンズ程度で疲れてしまうらしい。

彼らは途中で帰ってきたことを隠す場合が多い。
本当はたいした旅行をしてないのに、アメリカ全土を旅行したような話をするものなのだ。

最後が、アメリカに入っただけで精神力を使い果たしてしまった旅行者。
アメリカへ来たら最後、ほとんどどこへも移動せず、最初の町でずっと過ごすタイプの旅行者。

「NYが大好きでずっといた」は「NYから他の町へ動くのがいやで旅行期間中時間つぶしをしていた」というのが正直な話なのだ。

もちろん初めて外国に出て、その衝撃が強烈で、圧倒されてしまう純粋な旅行者もいる。
僕はずーっと同じ町にいる旅行者を否定しないけどね。

日本を出たら、自分の好きなように旅をすればいいだけだ。
なにも、苦しい思いをして、アメリカ中を無理に走り回ることはない。
そういうすごい旅行は、神に選ばれた「世界旅行者みどりのくつした(みどくつさん/みど先生)」くらいしか出来ないものだったんだよ。

これが1988年末の、アメリカ旅行とアメリカ旅行者概論だったわけだね。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20080522#p9