話の面白くない日本の男は、ホント、ウザイだけで使い道が無いから困るよ

【レストラン末広@1番街/リトル東京】
「ホテル大元」の狭い階段上の踊り場で、女の子と会った。
長期旅行のさまざまな経験を通して、女性を見ればとにかく声をかける体質に進化していた僕は、さっそく話しかける。

日本の女の子は、日本にいる時に見知らぬ人から急に声をかけられたら必ず無視するのが基本だ。
でももちろん、旅に出ていれば、心のどこかで人との出会いを期待している。

だから旅先で、会話をスタートさせるのは簡単だ。
ここで声のかけ方を簡単に講義しておこう。

誰が見ても旅行者に、「旅行ですか?」と聞くのは、当たり前過ぎる。
旅慣れてくると、最初から「○○から来たの?」と、ズバリ聞くのがテクニックだ。

ロサンジェルスの場合は、挨拶する前に「南米帰り?」と聞くのが時間の節約になるだろう。
すると、南米に行ってても行ってなくても、話は簡単に盛り上がる。

旅先で出会った人が、留学している場合もある。
留学生に旅行の話を振ると、ムッとされる。

ちょっとでも留学っぽい場合は、旅の話は避けた方がいい。
ダイレクトに、「留学ですか?」と聞いた方がいい。

「私ってやはり賢そうに見えるのね!」と単純に喜ぶからだ。
まあ、単純に喜ぶのは賢くないということだが。

きれいな女性は、素直にほめた方がいい。
僕が良く使うのは、「失礼ですが、博多からいらっしゃいましたか?」というフレーズだ。

突然こう聞かれたら、女は「えっどうして?」と答える。
そこで僕はおもむろにぐるっと体を一回転させて、右手の人差し指で軽く女の頬に近づけて、こう言うのだ。

「だって、肌が博多人形のようにきれいですから」

ただこのテクニックを使うと、まあだいたい80パーセントの割合で普通の日本女性は逃げていく。
注意するように。

でもここで、女の子への声のかけ方講座ばっかりしているわけにはいかない。
もともとこの話は「ホテル加宝物語」なのだが、まだホテル加宝の玄関にも入っていないからだ。

「ホテル大元」のこの女には、「ねー、ねー、おじちゃんとお話ししようよ」とおとなしく声をかけた。
世界旅行者は、変わった女の子、個性的な女性をたくさん知っている。

だから、ちょっと言葉を交わしただけで、女性を判断できる。
僕は、この女が根性の悪い、見栄張りたがりの、いやなタイプだとすぐに気づいた。

でもまあ、時間をつぶすには、どんな女の子でもかまわない。
僕がダイマルホテルの唯一の集会所で女と2人きりで話をしていれば、他の男も集まってくる。

女に飢えたモテない男たちが、田舎の電信柱に取りつけられた電灯に集まる蛾のように群れてくるのだ。
僕はこの程度の女を独り占めしようというモテない男ではない。

みんなに話を振って、各自のアメリカ旅行の印象を引き出そうとした。
この時代の旅行者は、だいたいはロサンジェルスからニューヨークまでは行って、フロリダへも足を伸ばしている。

米国旅行が一般的だったので、ぐるんと北アメリカを一周している旅行者も普通にいた。
もちろん旅行記間が短くて、グランドキャニオンやラスベガスへ行っただけという旅行者もいる。

ところが集まってきた中の1人の男は、なぜか、ニューオリンズがすばらしいという話しかしない。
大陸横断の根性がなくて途中で帰って来たので、一番遠くへ行った町のことを自慢したいのだろう。

僕が「あそこのミュージシャンは観光客目当てで、たいしたことないんじゃないの?」と話を向けた。
そうすると、むきになって音楽のことをしゃべる。

しかし中身は何にもない。
だいたいは「地球の歩き方」に書いてある、ありふれた話だ。
もちろん世界旅行者はニューオリンズに行って、YMCAに泊まって、歩き倒してきたばかりだ。
また、バーボンストリートでビールを飲みながら歩いてもいる。

だから、ニューオリンズの話でも、面白ければ僕がいくらでも突っ込んであげたのにね。
結局、僕と比べると知的レベルが違いすぎるんだよ(涙)。
ここで世界旅行者ファンの皆様に話を面白くするテクニックを公開しておきます。
それは、「自分の旅行が失敗だった」、「旅行なんかに行かない方がよかった」、と話すことだ。

旅行者の話の基本は、とにかく自分の行ったところをけなすこと。
「僕はあそこへ行きましたが、ひどいところでしたよ!ゼッタイ行かない方がいいです」という風に話を広げていく。

これだと話を聞く方も、うれしいからね。
赤の他人の「旅が楽しかった」「旅は大成功だった」みたいな話を、金ももらわないのに、聞いてくれる人はいない。

ニューオーリンズ男は、その大原則がわかってない頭の固いやつだ。
あんまり話が面白くないので、無視することにした。

もっと話の通じる別の男と、「グレイハウンドはいいかげんだ」という悪口で盛り上がる。
話のおもしろくない男は、一人浮いてしまった。

ニューオーリンズに行った以外、何にも話のネタのないこの男は、女に「どこから来たの?」と、どうでもいいことを話しかけた。
ここで書いておくが、旅先というのは、日本の自分の存在から切り離された自由を味わうところだ。

だから、日本での自分の住所とか職業とか、そういうことを持ち出すのはルール違反なんだ。
ところが、何たる偶然か、この女とこの男は四国の田舎の小さな同じ町の出身だった!

女もダサいが男もダサい。
きっとこの田舎町は死ぬほど退屈なところなのだろう。

が、2人はなんと、誰も聞いていないのに、ふるさとの町並みの解説まで始めたのだ。
「そうそう、あの八百屋の向こうに写真屋があって、その写真屋には私のいとこがいるのよ」と2人だけで、盛り上がる。

おもしろくも何ともない話だ。
2人で四国のド田舎の話をしたいならば、部屋に行けばいいのに。

2人でベッドしかない狭い部屋に入れば、他にもすることがあるだろうし。
ホテルの踊り場は狭いので、急に元気が出た四国の田舎者が大声を出すと、他の人の話の迷惑になる。

あんまりおもしろくない話を耳元でがんがんされて、さすがの世界旅行者も疲れた…。
他の男を誘って「ホテル大元」と同じ並びの日本レストラン「末広」に退散したよ。

日本の男というのは、本当に話が面白くないよね。
僕が日本の女の子が好きなのは、ただ日本の男の話が面白くないってだけなんだよなー。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20080523#p2