若い男女と、あごひげを生やしていた僕は、一緒のオンボロバスに乗って、ポカラから国境のスノウリへ。@ポカラ〜スノウリ/ネパール
カトマンドゥでの2度目の滞在は、いろんな珍しい人間関係もできて(特に欧米人と英語で話ができて)、本当に楽しかった。
しかし、旅人は常に、ある場所で居心地よくなった状況を捨てて、一人旅立つもの。
また、そうでなければ、旅ができない。
確かに、自分の気に入った場所を見つけて、落ち着くのも、一つの考え方だけどね。
だから別に、長い旅を続けていることが偉いわけでもなんでもない。
ネパールが大好きになったら、長期滞在してもいいし、何度もネパールに来てもいい。
親しくなったネパール人と、結婚して、住み着いてもいい。
ただ僕は、これからインドへ行って、南まで縦断して、スリランカへ飛ばなければならない。
だって、切符がそうなってるからね(笑)。
そういう切符を買ってしまったということは、そういう「運命」なのだと考える。
このように、僕は、「運命を自分で切り開こう!」とは、考えない。
だって、それはなかなか難しそうだから(涙)。
僕は目の前にあることしか考えない。
つまり、いま僕の頭にあることは、とにかく、無事にインドへ入国して、世界中のバックパッカーの憧れ「バラナシ」へ行くことだ。
さて、ポカラ発のおんぼろバスに乗るときに考えること。
それは、体調を整えて、下痢をしないことね。
とにかくトイレのないバスで、下痢になるくらい苦しいものはないんだ。
僕はそれを、2007年に西インド旅行をしたときに、体験したよ(バスで下痢は困る)(朝到着したところにトイレがないのは困る)。
だから、出発の朝は、トイレに何回も行って、トラブルが起きないように準備をする。
そして、朝8時過ぎだったと思うが、いくらなんでも9時にはなってなかった時間に、湖沿いの道端で、バスを待つ。
道端には、日本の田舎のバス停のような、印があるだけ。
つまり棒が立っていて、上に丸い板が、ついてるだけ。
ちょっと早めに行って、バスを待っていると、日本人の男女2人がやってきたので、挨拶する。
女性は25歳くらいで、男性はそれよりも若い感じがしたが、年齢を聞いたりしなかったので、正確なところはわかりません。
なかなかちゃんとした挨拶のできる若者たちで、好感が持てた。
「インドへ行かれるんですか?」と聞いてくる。
「そうだよ(笑)♪」と、さわやかな笑顔で、返事をする。
いま思い出したが、僕はこの旅で、バラナシに着くまでは、あごひげを生やしていたんだった。
だから、外見は、インド旅行通に見えたかも。
まあ、ポカラと2度目のカトマンドゥ滞在で、外国人との付き合いにも慣れていたから、旅慣れた雰囲気はかなりあったはず。
実際は、ネパールにちょっといただけの、「ただのインド初心者」だったんだけどね。
でも僕は、何でもその状況に、すぐはまってしまう軽薄な人間なので、ネパールにいても、インドにいても、そこに行ったとたん、馴染んでしまうんだ。
例えば、僕がこのあと、世界一周でロンドンにいたとき、最初の日なのに、ロンドンに長く居るような雰囲気だった。
そのロンドンに長く居る雰囲気で、ロンドンのビクトリアステーションのパブで、日本人カップルに声をかけたことがあったっけ(笑)。
それは僕の才能だろうね。
ただ、こんな才能は、あんまり役には立たないと思うけどさ(涙)。
このカップルと、もっと話をしようとしたときに、バスがやってきてしまった。
中型のおんぼろバスで、左側に一席、右側に2席の一列三席だった。
僕は左側の席に、彼らは同じ並びの右側の2席に並んで座った。
最初の方は、ガラガラだったが、すぐに満員になった。
乗客で旅行者らしいのは、僕たち3人の日本人だけ。
というのが、僕は外国人(欧米人)がいれば、必ず話しかけて、いろいろ聞いただろうからね。
つまり、他の乗客は、本当に現地のネパール人の人ばかりで、その中に日本人が3人いたわけだ。
これをいま考えると、ひょっとして、別に、ちゃんとした外国人用のバスがあったんじゃないかな、とも思う。
日本人だけ騙されて、安いローカルバスに乗せられたかもしれない。
それも、いまこの旅行記を書いていて、考えたことなんだけどね。
だから、旅をして、感激したまま、すぐに旅行記を書いてはダメなんだよ
しばらくして、世の中のいろんなことがわかってきて、旅行の出来事が冷静に判断できなければいけない。
そうでないと、旅先の人はとても親切でした(実は親切に見せかけた詐欺だった)。
安く売ってくれました(最初からめちゃくちゃなボッタクリだった)、
などという、勘違いだらけの、騙されているのに気がつかない、馬鹿馬鹿しい旅行記が出来上がる。
こんな本を出したら、読者がさらに勘違いするから、詐欺師の手伝いをやっているようなものだ。
バスは山道をどんどん走る。
道が悪くて、揺れで、頭が天井にぶつかりそうになったりする。
それを手で押さえて、安定させるが、さらに揺れが来ると、バスの座席のシートごと、身体が浮かぶ。
だから、あんまり話はできなかったね。
話をすると、口の中を切りそうだったし。
でも、彼ら2人が、僕と同じく、バラナシまで行くのはわかった。
だったら助け合ったらいいさ。
まあ、一緒のバスに乗っているってこと自体、互いに助け合ってるってことなんだけど。
後ろに座っていた、おばあさんから、サトウキビをもらった。
言葉は通じないが、ニコニコして、受け取ってかじったりする。
で、多分まだ明るいうちだったから、7時間ほどで、インドとの国境の町、スノウリに到着した。
僕もカップルも通しの切符を持っていたので、それを誰かが見て、今夜の宿に連れて行ってくれた。
カップルと僕は、違う旅行社で切符を買ったせいか、別々のホテルに連れて行かれた。
ホテルとはいっても、僕の宿には、何にもなかった。
15歳くらいのネパール人少年が、案内してくれたが、部屋はただベッドがあるだけ。
バックパックをチェーンと南京錠で家具に結びつけて、外に出る。
国境を見に行くと、ただ単に踏み切りの遮断機みたいなものが降りているだけ。
ひげを生やしたインド側の係官が、「日本人か、インドにちょっと入ってみるか(笑)?」と声をかけてくる。
しかし、ネパールで散々、インドのトラブルを聞いてきた僕は、安全策を取って、インドに入ったりはしない。
切符を買ったときに、スノウリで一泊するとは聞いていなかった(というか、気にしてなかった)。
日本人2人とは、スノウリでバスを下りて以降、会わなかった。
食事を一人で取ったのだと思おうが、覚えてない。
とにかく、明日、インドとの国境を越えて、バラナシまで行けば、それでいい。
他はいま考えることではない。