2:当日になって旅行の用意をする(8月23日)

さて、全ての用意は出来た…、はずだ(?)。
昨日、銀座でY嬢と会って、一緒にアメックスオフィスでドルのT/Cを購入した。
再発行が簡単なアメックスのドルのT/Cを持つのが、これは旅行者の基本。
T/Cの額面は全部50ドルにしたが、これは国境をどんどん越えるタイプの旅行者の常識だ。

アメリカへ行く時はT/Cを使ってドルキャッシュを手に入れればいいが、僕はタイからカンボジアやベトナムへ行くかもわからないので、現金のドルも少し用意した。

国境を越えるときは、いろいろと少額のドル紙幣がものを言うので、10ドル札を9枚、1ドル札を10枚両替した。
足りない分はT/Cを現地通過に替えて使えばいいし、なにしろ旅行計画はいつものとおりに未定で、タイのビーチでごろごろするだけになる可能性もあるのだから、この程度でいい。

旅行保険については、ニコスカードを持っている。
これを持っているだけで、自動的に最長90日の海外旅行保険がかかっている。
さらには携行品損害(早い話が盗難保険)が免責3000円で、20万円までくっついている。
自分で保険をかける時は保険料の高い携行品損害などをかけるはずがないので、これは
非常にいいカードだ。

出発当日の朝、重要な書類がすべてそろっていることを確認して、ばたばたと荷物を詰め始めた。

たった10日の旅行なのだから、やろうと思えばディバッグ一つで旅行出来る。
しかし、短い旅行に限って、なんやかんやで結構ものを買うものなのだ。
すると買ったものをいれるのに、またバッグを買うことになる。
僕の狭い部屋にはこういう理由で買ったバッグがいっぱいある。

それがわかっているので、昔インド旅行に出る前に池袋西武で見つけて以来ずっとお世話になっている緑色のバックパックを持って行くことにする。
これなら機内持ち込みの手荷物として通用する大きさだからだ。

最後まで迷ったのは、愛用のスイスアーミーナイフ・チャンピオンだ。
いままで基本的には、旅行に出る時必ずアーミーナイフを持って行った。
ただ、成田空港での手荷物検査ではアーミーナイフが発見されて、機長預かりになってしまうのだ。(世界中の他の空港では、発見されて問題になったことはないのだが)

これにはずいぶん困らされた。
フィジーに行くときと、LAに行ったときと、2回もナイフを機長預かりにされてしまったことがある。

それ以来、基本的にはチェックインする荷物の中にナイフをいれるようにしていた。
しかし、今度の旅行はすべてを手荷物として機内持ち込みにする。
しかも今度の飛行機は、安いので有名なあのパキスタン航空だ。

バンコク・ドンムアン空港に着くのは順調に飛んで夜の9時半。
パキスタン航空は飛ばなかったり遅れたりするのが日常茶飯の航空会社なので、機長が預かったナイフなんか、どこかへ行ってしまっても不思議ではない。
その危険が十分わかっているのに、思い出のいっぱい詰まっている、僕と一緒に世界一周旅行をしたアーミーナイフを、わざわざ持って行く訳にはいかない。

今回はワインで有名な国に行く訳でもないのでワインの栓抜きは必要ない。
キーホルダーに小さなアーミーナイフをつけてあるので、これで間に合うだろう。
小さなハサミもついていることだしね。

あとは、縫い針と緑色の木綿糸。
これは僕の年代物のバックパックがほころびた時に縫うのに必要だ。
この針と糸はロンドンのハロッズで買ったのだが、世界中でお世話になっている。

二日酔いで、あと何が必要なのかよくわからない。
(やっぱり爪切りと耳掻き、傷薬とバンドエイドを忘れていた)

実は昨日まであんまり体調が良くなくて、出発するのを中止しようかと考えていた。
中止した所で5万円弱なのだから、無理をすることはないのだ。

でも今朝になると急にやる気が出てきた。
さすがに「世界旅行者」だね。

バタバタしていると、午前9時過ぎて、Y嬢から電話が入った。
昨日、どうも身体の調子が悪いので、ひょっとしたら行かないかもしれないと、確認の電話をするようにいっておいたのだ。

「行くよ!」と返事をして、成田第2ターミナルのGカウンターで待ち合わせを約束する。

待ち合わせを約束するが、万が一彼女が来なくても僕はそのまま出発するつもりだ。
Y嬢にも僕のことは気にせずに、一人でも行くようにと言ってある。

いったん旅行に出れば、約束はほとんど当てにしていない。
約束に捕らわれていては何にも出来ないのだ。

 

たった10日しか部屋を空けないのに、いつものように冷蔵庫を空にして電気を切ろうと考えた。
そして冷蔵庫の中には半分しか飲んでいないフランスワインが入っている。
これは飲まなければいけない!

一生懸命に飲む。
二日酔いにはぐっと効く。
頭がふらふらっとした。

そうこうしているうちに、約束の時間には間に合いそうになくなった。
まあ、いいさ。
もう旅行に出ているようなものなのだから、人との約束なんてどうでもいいのだ。
Y嬢にも、そう言い聞かせてある。

国鉄の田町駅まで歩き、山手線で上野まで、イラン人をかき分けて京成上野駅へ到着。
いつものように京成特急に乗る。
スカイライナーよりも800円安く、これでビールとつまみを買えるからだ。

Y嬢は僕の姿を見つけて、大きく手を振って走って来た。
Gカウンターの前で僕を1時間待ったという。

Gカウンターの30番でバウチャーを航空券と引き替える。
切符を確認すると、僕の航空券は確かに帰りの予約がOKで入っている。
Y嬢の切符を見ると、帰りがオープンになっている。
安い切符は帰りの予約をいれておくように念を押していたので、彼女に聞くと、エージェントが入れ忘れたらしく「ごめんなさい」と言っていたとか。
ふざけた話だ。

しかしまあ、こういうことはよくある話で、これぐらいはありふれている。
僕はもっととんでもない話もいっぱい知っている。

バンコクに着いてすぐにパキスタン航空のオフィスを訪ねて、彼女の予約と僕の予約の再確認をしなければならないというだけだ。
今は8月の終わり、彼女の帰国は10月になるはずだから、いくらなんでも予約は入るだろう。

2人で出国審査をすませて、僕は免税店でレミーマルタンを買った。
なぜって、今日乗るのはパキスタン航空で、機内での酒のサービスはないからだ。

(駆け足旅行 #2)

 

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