『ダカールを出て40時間かかって、深夜にバマコへ到着』@マリ/西アフリカ

【バマコ鉄道駅】
朝からビールを飲んでいたので、昼寝をして午後7時過ぎに起きた。
とっくにバマコ到着時刻は過ぎているのだがまだまだ先は長いようだ。
「明日朝に着けば一番いいけれど、真夜中に着いたら、ホテル探しが大変だなー」と、わいわい言う。
そして、夕食をつまみにして窓立度氏と、雀部くんと三人でビールを次々飲み干してゆく。
するととうとうレストランカーのCASTELの大瓶がなくなってしまった。
なくなると口さびしく「ビールはないのか!」と叫んでしまう。
食堂車にいた若者が「金を出してくれるなら、次の駅で僕がビールを買ってくるよ」とボランティアを申し出る。
OKを出すと、CASTELの小瓶を6本買ってきて一本500フラン、全部で3千フランだという。
これは払ったが、まだまだビールが飲み足りない。
ビールがないので寝台車の乗客は、皆コンパートメントへ戻る。
雀部くんは、客車伝いにずーっと歩いて二等の自分の席へ戻ったようだ。
バマコ到着は明朝と覚悟していたが、真夜中に列車が止まり、人が動いている気配がする。
モハメッドもザビエルも立ち上がって支度をしている。
僕は隣のコンパートメントの窓立度さんに声をかける。
深夜も深夜午前1時20分に、僕たちは、とうとう、マリの首都バマコ駅に到着したのだ。
国際列車はダカールを土曜日の午後に3時間半遅れて出発して、目的地バマコへ10時間遅れの月曜日午前1時半に無事到着した。
出発が遅れても列車には乗っていたのだから、合計で40時間かかったわけだ。
しかし、40時間で到着したというのは、なかなか調子よかったらしい。
確かに途中では特に問題はなくスムーズに走ったしね。
ただ到着が真夜中になったわけで、これからやはり寝るところを探さなければならない。
こんなところで朝まで過ごすわけにはいかないよ。
窓立度氏といっしょに寝台車を降りて駅の出口で雀部君を待つ。
彼がなかなかやってこないので、僕が二等車の方へずーっと歩いて、名前を呼びながら探すが見つからない。
窓立度氏は雀部くんを心配そうに待っている。
ザビエルを見つけて声をかけると、彼はこれからバマコ駅構内のホテル「Hotel-Buffet de la Gare」へ行くという。
僕はその一瞬、窓立度氏と雀部くんのことは放って、ザビエルとホテルに行くことに決める。
だってもうバマコに到着してしまったのだ。
窓立度氏雀部くんはバマコに来るまでの国際列車の友人で、いっしょに酒を飲んで話を盛り上げて楽しく過ごした(つまり役に立った)。
しかし、バマコでもまた僕の役に立つかどうか、それはわからないのだから。
それに比べると目の前のザビエルは、一緒に酒も飲んで人柄がいいことは確認してあるし、彼は泊まるホテルを知っている。
つまりこの段階では、日本人二人よりもザビエルくん一人の価値がぐっと高くなったってわけだ。
そこで「僕はザビエルと一緒に駅のホテルへ泊まりますから!」と声をかけてホテルへと進んだ。
駅構内には、タクシーがたくさんいて、ミッションカトリックなどの安宿の名前を叫んで客を誘っている。
が、深夜知らない町でタクシーに乗って、知らないホテルに向かうのは、絶対にやってはいけないことだ。
安宿に行くつもりが「そこは満室なので」と、別の高いホテルへ連れて行かれることもよくある話。
それでも、強盗にあわないだけましと考えるべきことなのだからね。
ホテルの受付には人だかりがしていた。
そこをかき分けて空き部屋を聞くと、シングルが10385フラン。
ザビエルと隣同士の部屋をゲットする。
1万500フランを出すと、当然「お釣りはない」と戻ってこない。
シングル一万フランといえば、千7百円。
中南米でも東南アジアでもかなりちゃんとしたホテルに泊まることもできる金額だが、ここでは最低の部屋だ。
二階のシングルの部屋が鉄道駅の構内に向かって並び、その前にベランダタイプの通路がある。
部屋は広いがベッドがひとつと天井に大きな扇風機があるだけ。
シャワーとトイレは通路の突き当たりにあるが、お湯は出ないしトイレもお世辞にもきれいとはいえない。
まあいいさ。寝るだけなんだから。
でもやっとバマコに着いた興奮が抑えきれない。
ザビエルに声をかけ、ビールを飲みに庭に降りる。
ホテルには大きな庭があり、そこにテーブルが置いてある。
二人で座るとさっとウェイターがやって来る。
僕はここで、この国際列車が深夜バマコに着いた理由がはっきりと理解できたね。
このホテルはマリ国鉄と組んでいる。
人が移動しにくい深夜にバマコ駅に到着して、客が駅のホテルに宿泊するように考えている。
明るいうちに到着しないように、わざと遅らせて運行しているわけだよ。
マリビールのCASTELの大瓶を頼んで夜空を見上げ、「とうとう国際列車でマリに入ったんだ!」と、感動を新たにする。
この鉄道はこれからますます老朽化するだろうから、いずれ廃止されるに決まっている。
廃止されたらいくら金を積んでも乗ることはできない。
いまこの国際列車に乗ったことは、世界旅行者としてまたポイントを上げたわけだ。
僕はビールを一本空けただけで部屋に戻る。
僕には早く寝なければならない理由がある。
というのは今日は月曜日だ。
つまり朝一番でトンブクトゥへの飛行機の切符を購入するつもりなんだよ。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20090617