『ホテルアザライ(HOTEL AZALAI)に宿泊するが、客引きに監視されている』@トンブクトゥ/マリ

【ホテルアザライ(Hotel Azalai)@トンブクトゥ/マリ】
トンブクトゥの平屋建ての空港ビルへ歩きながら僕は深刻に悩んでいた。
それは空港からトンブクトゥの町へのアクセスのことだ。
何にも知らないまま来てしまったが、その理由は、トンブクトゥへの飛行機が満席らしいし、そうなれば絶対に他のヨーロッパからの旅行者がいると見当をつけていたからだ。
他の旅行者がいれば、彼(または彼女)に話しかけてくっついていれば、自動的にトンブクトゥの町へももし安宿があるなら安宿へでも連れて行ってくれるだろう(これが有名な「コバンザメ式旅行法」だ)。
ところが、空港ビルへ歩く人を見ても他に旅行者ぽい人間は見つからないんだ。
そこで僕は、僕の完璧な「コバンザメ式旅行法」に一つの欠点を見つけた。
それはこの旅行法は「他の旅行者がいない場合は使えない」ってことだよ。
飛行機に預けたバックパックは、空港ビル前で台車に乗せられたままのものを勝手に取る。
僕はこのとき、適当な人に話しかけた。
「トンブクトゥの町へはバスか何かありますか?」ってね。
普通は、土地勘のない不安そうな外国人からこう話しかけられた場合、「じゃあ、僕の車に乗っていきますか?ついでに、夕食もどうですか?いや僕の家に泊まりなさいよ!」と、こうなるのが話の流れだ。
しかし何度でも言うように、西アフリカにはそんな気のいい人たちは住んでいないようで「バスはない」というあっさりした返事があるばかりだ。
しかしもちろんトンブクトゥは観光地なのだから、観光客を狙ったガイドが客を引いている。
四輪駆動車に乗った若者3人が話しかけてくる。
「いつまでいるのか、砂漠ツアーに行かないか」なんてね。
そこを「まだ決めていない」と気を持たせて、トンブクトゥの町へ行くだけの値段の交渉をして4000フランで話をつける。
一人がこの三人のボスらしくトゥアレグ族の民族衣装を着て目が鋭く、いかにもやり手な雰囲気だ。
僕はわかっている、彼らは観光客を街まで送るのが目的ではないってことが。
彼らの目的は観光客に取り入ってツアーを売り込んで、金をぼったくってやろうってことなんだよ。
だからここから、実はガイドと僕との暗黙の戦いが始まっていたわけだ。
車の中でガイドブックをめくるとトンブクトゥにはホテルが2つしかないようだ。
一つが「HOTEL BOUCTOU(ブクトゥ)」、高い方が「HOTEL AZALAI(アザライ)」。
こんなところで身体を壊したらたいへんなことになるので、高いほうへ泊まることにする。
一泊26100フラン(4400円くらい)。
部屋はちょっと暗いがシャワー、トイレ、クーラー付きのツインの部屋だ。
おそらく日本からの高価なツアーが使うホテルなのだろう。
ただ、シーズンはずれなのかほとんど客がいない。
ロビーもレストランもがらんとしている。
ホテルへ着くまでに四輪駆動の中からトンブクトゥの町をサーッと見てしまった僕の結論は「わかった、もうこれ以上見るところはない」だった。
トンブクトゥとは噂通りの何にもないただの汚い町なんだよ。
だったらとっとと脱出を考えればいいはずだ。
が、僕は「でももっと何か話のネタになることがあるんじゃないか?絵葉書も出しておきたいし、パスポートにトンブクトゥ警察のスタンプも欲しいし」と思ってしまった。
チェックインを済ませた後でホテルにある大きなレストランでビールを頼むと、CASTELの大瓶が1500フランもする。
列車でもバマコの駅のホテルでも800フランだったのだからさすがに高いね。
空港から送ってくれたガイドは僕がビールを飲むところにやってきて、砂漠ツアーの説明を始める。
名前を聞くと「ニガサン」だとか、彼の助手は「ハナサン」という。
ニガサン(逃がさん)とハナサン(離さん)?これは何かしつこそうな名前だね。
僕は疲れているからと彼らを追い払い、レストランのマネージャーに話を聞いた。
「砂漠ツアーに行くのに信頼できるガイドはいるか?」ってね。
すると答えは「ニガサンがいい」とのこと。
なるほど!このホテルとニガサンは繋がっているんだ。
だからニガサンは安心して、僕を一人にして帰っていったんだよ。
うーむ、何かずっぽり罠にはまったような気がするね。
でもまあまだ昼時なのだから、僕はとっととトンブクトゥの町を見学に出発しましたとさ。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20091012