『外国人コンパートメントに、英語の達者なベトナム人がいる理由/ドイツ人のガールフレンドの謎/ビンジュオンU』@フエ/ベトナム

【ビンジュオンホテル(Binh Duong Hotel)】
2002年8月9日。

ハノイ発のE1列車で目が覚める。
目が覚めるが、目的地のフエへの到着は、午前10時13分の予定だ。

列車にはクーラーも効いているし、清潔な寝具もある。
また僕のベッドは3段のうちの一番上で、誰の邪魔もされない。

世の中で一番気持ちいい状態というのは、半分眠っていながら、ぼんやりと起きていて、いろんなことが頭に浮かぶ半覚醒状態かな。
僕はこのとき、日本語の文庫本も持っていたので、眠い目でベッドで本を読んだり、また寝たりを繰り返していた。

朝になって、目を覚まさせるのが目的なのか、列車内に音楽が流れる。
それがまた、半分が日本の曲で、覚えているのでは「津軽海峡冬景色」なんかがあったよ。
僕はベッドの寝ながら、下で話される英語の会話を聞くともなく聞いていた。
というか、自然に耳に入ってるわけけだが…。

このコンパートメントには、フランス人3人、ドイツ人1人、日本人の僕、それからベトナム人のおじさんが入っていた。
そうして、このおじさんは、なかなか英語が流暢で、愛想がよくて、みんなに声をかけて、話をしていた。

ところで、僕の切符に「ticket for foreign passenger」とあったのを思い出して欲しい。
ということは、ベトナム国鉄は客が外国人であるということを熟知している。
また、このコンパートメントには、5人の外国人が集まっている。
そうしてそこには、なぜか、英語ペラペラのベトナム人のおじさんがいた。
しかもそのおじさんは、変に愛想がよくて、みんなの話を聞き出すのが上手だ。
これと同じことがあったのを、この旅行記の愛読者は思い出すだろう。
つまり、僕がラオカイからハノイへ来た時、日本人3人のコンパートメントに、英語ペラペラの自称ガイドいっしょだったよ。

僕がベトナムで夜行寝台列車に乗った2回とも、外国人のコンパートメントには、英語がしゃべれるベトナム人が乗ってきた。
これが偶然なはずがない。

ベトナムというのは、いくら解放されて、海外からの観光客が多いとはいっても、共産党の独裁国家だ。
だとすれば、外国人を見張っているに決まっている。

この英語ペラペラのベトナム人は、外国人の監視をしているのだろう。
ぼくはそれが、はっきりとわかった。

でも僕はただのありふれた、どこの町内にも一人はいる「世界旅行者」だ。
いくら調べられても、全く後ろめたいことがない。

おそらくベトナムの秘密警察も、僕の素性はすでに調べつくしているのだろう。
特に、僕に話しかけることもなかった。

ベッドでごろごろしていて、ちょっとトイレに行ったが、また上段のベッドに戻って、本を読んでいた。
下の会話を聞くともなく聞いていると、ドイツ人の若者が「フエに行くのは、ガールフレンドがいて、大学に通っているからだ」と言ってるのを聞く。

それで僕は、「若者のガールフレンドがドイツ人で、彼女がフエで学校に通っているのかな?」と思ったりする。
欧米人というのは本当に世界を自由に歩き回っているので、ドイツ人の女性が、フエで大学に通っていても不思議ではない。

時計を見て、そろそろフエに近づいたころ、僕もベッドから出て、下に降りた。
不思議なことに、このときはフランス人の3人も、ベトナム人のおじさんもどこかへ行ったらしく、見当たらなかった。

フエの駅に着くまで、僕はドイツ人の若者と、いろいろ話をしてみた。
気になっていたのは、彼のガールフレンドというのがドイツ人なんかってことだ。

そこを聞くと、ガールフレンドとは、ベトナム人の女子大生らしい。
それならば、別に驚くべきことでもない。

きっと旅をしている途中か、フエに寄った時に知り合ったのだろう。
ただ僕は、ドイツ人ではないとわかった段階で、一つの区切りがついて、それ以上追求するつもりもなかった。

ベトナム人女性が、欧米人と知り合ったり、結婚したりするのはよくある話だ(このあともそういう話が出てくる)。
あとは旅行者同士定番の、互いの旅行の話をしたが、そのことは全く覚えていない。

さて、ベトナム国鉄は、驚くべき正確さで、たった3分遅れでフエ駅に到着した。。
予定が午前10時13分なのに、到着は10時16分なんだから。

フエの駅前に出ると、バイタクが群がっていて、声をかけてきた。
しかし僕は、バイタクの群れをとっとと抜けて、歩き出す。
僕は人に取り囲まれるのがイヤ。
また、フエ自体はそんなに大きな町でもないだろうと、思わないわけではなかった。

ただ、どちらに行ったらいいか、さっぱりわからないけどね。
バックパックを背負って、ただひたすら鉄道駅から歩いていたら、バイタクが声をかけてきた。

僕がフエで行くところは決まっている。
ハノイで日本人から聞いた「ビンジュオンホテル(Binh Duong Hotel)」だ。

このホテルには、どうやら日本人がウジャウジャいるらしいからね。
だいたい方向もわからないのだから、バイタクに「ビンジュオン!」と言う。

するとバイタクは、「オーケー、オーケー」と答える。
5千ドン(40円)で、ビンジュオンへいくというので、気軽にバイクタクにまたがる。

バイクは軽やかな音を立てて、とっとっとーと走り、ゲストハウスへ到着。
ここがビンジュオンらしい。

ベトナム女性が出迎えてくれて、ビンジュオンであることを確認。
部屋を見せてもらうと、清潔で大きな、ベランダ付きの3人部屋を1人で使って15ドル。

それを14ドルに値切った。
でも、他に日本人が見えないし、日本語の本もなく、日本人宿にはなからずあるはずの情報ノートもない。

「ベトナムはとにかく人を騙すところ」という定説が頭に浮かぶ。
「日本人がたくさんいると聞いたんだけれど、ここは本当にビンジュオンか?」と追求する。

すると、これは、「ビンジュオンU」だとか。
あーあ、やはり騙されていた。
フエに来たからには、有名な日本人宿「ビンジュオンホテル」に泊まらないわけにはいかない。
だって僕は、日本人宿にいる日本人を観察するのが、趣味なんだからね(笑)。
http://d.hatena.ne.jp/worldtraveller/20090426#p1
参照: フエの日本人宿「ビンジャンホテル」にいけばすべて解決